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コエロギネの解剖学

2024年4月27日(土)〜5月19日(日) 土日祝日のみ [11日間] | 山武市

今年の2月にこの島国でヒトに臓器を提供するための豚が生まれたというニュースが報道されたことを覚えていますか。近年、海外でも遺伝子操作した動物の臓器を人間に移植しはじめています。近い将来、人間の臓器を供給するための家畜工場がつくられる予感がします。近代以後の人間の欲望は、ほかの動物に対する生命倫理の境界についてあまりに曖昧に扱ってきたのかもしれません。動物の胎と体を使って自らの臓器を作り出す行いは、自らの日々の糧を得るために動物を家畜化し、その営みと共に過ごし、その生命の在り方を管理することとどのような違いがあるのでしょうか。    

「コエロギネの解剖学」では、役目を終えた酪農場の畜舎を舞台に家畜界の女性市民とされる牝牛たちの一生と、この島国における彼女たちの母乳利用に関する地政学的な歴史を人間の女性の声による語りと環境音を用いて紐解いていきます。

人間にとって、彼女たちはミルク製造機であり、彼女たちの子宮・コエロは彼女たち自身をクローンのように生み殖すのための資源として利用されています。しかし、彼女たちにもわれわれ人間と同じように精神活動や情動があり、その生命は彼女たち自身の生命の力によって生かされています。一万年前、野生動物だった彼女たちと、これからの百年、私たち人類はどのように接し共生していくことが可能なのでしょうか。この島国の酪農発祥地とされている千葉県の畜舎から何かを新しく思考し始めることができるのかもしれません。

<山武市柴原地区:笹川農場>
「コエロギネの解剖学」 8チャンネルサウンドインスタレーション 約42分
「ポロヌプ ー 乳の流れる地」 ドキュメンタリー映像 18分(work in progress)撮影地:北海道天塩郡幌延町

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