イベント

終了 : en Live Art Performance 木更津公演

2023.11.05 | 木更津市

食 | 音楽

「百年後芸術祭‐内房総アートフェス‐」のメインコンテンツである「en Live Art Performance」の木更津公演と「EN NICHI BA」は、11月5日(日)にKURKKU FIELDSで開催します。

「en Live Art Performance」は、⾳楽・映像・ダンス・光・テクノロジー(ドローン)を融合させたライブアートパフォーマンスです。
地域の食の魅力が集う「EN NICHI BA」は、約20店舗の屋台出店を予定しており、多様な千葉の食材を屋台形式で味わい、購入することができます。
さらに、「EN NICHI BA」のスペシャル企画として、山名新貴(やまなよしき)シェフと参加者が協力して料理を作り、 共に分かち合う、ワークショップ型のアウトドアダイニング「百宴~Prologue~」を同時開催します。

■料⾦
1,000円(開催当日、KURKKU FIELDSは入場無料)
※大人1人につき、小学生1人まで無料(未就学児は制限なし)
(例1:大人1人+小学生1人+未就学児2人→チケット1枚)
(例2:大人1人+小学生2人→チケット2枚)

■タイムテーブル
10:00- KURKKU FIELDS開場
11:00- 「EN NICHI BA」・「百宴~Prologue~」開始
15:00- 「百宴~Prologue~」終了
17:00- 「en Live Art Performance」鑑賞エリア開放
17:30- 「en Live Art Performance」開演
18:30 「en Live Art Performance」終演
20:00 KURKKU FIELDS閉場

チケット情報

各プレイガイドにて販売中(スマートフォンからお申込みください)

e+ https://eplus.jp/en-live-art-performance/
ぴあ https://w.pia.jp/t/enlive-c/
ローチケ https://l-tike.com/en-live-art-performance/

会場について

■会場
KURKKU FIELDS(千葉県木更津市矢那2503)
※アクセスの詳細はKURKKU FIELDSのwebサイトをご覧ください。

【お車の場合】
無料駐車場が2カ所あります。

⚫︎ 第1駐車場

⚫︎ 第2駐車場 ※KURKKU FIELDSまで徒歩約10分

【バスの場合】
東京駅、新宿駅、品川駅、川崎駅、横浜駅から高速バスで木更津駅まで約60分〜85分
木更津駅からKURKKU FIELDSまでは「臨時シャトルバス木更津駅前発着所」から「KURKKU FIELDS」まで無料臨時シャトルバスで約30分


【電車の場合】
東京方面よりJR総武線・内房線の電車にて木更津駅まで約80分(東京駅-木更津駅)
木更津駅からKURKKU FIELDSまでは「臨時シャトルバス木更津駅前発着所」から「KURKKU FIELDS」まで無料臨時シャトルバスで約30分
※木更津駅から無料臨時シャトルバスをご利用のお客様へ
無料シャトルバスは30分〜60分間隔程度での運行を予定しております。満車の場合は次の便のご案内となりますので、できるだけ時間に余裕を持った計画でのご利用をお願いいたします。

>>> アクセス&時刻表 PDFダウンロードは こちら

■会場周辺にお住まいの皆様へ
11月1日(水)~4日(土)の設営・リハーサル予定日と、11月5日(日)の開催当日は、en Live Art Performanceの演出上、大きな音や光が発生します。
会場周辺にお住まいの皆様には、ご迷惑をおかけいたしますが、御理解と御協力をいただきますよう、お願い申し上げます。

■料⾦
1,000円(開催当日、KURKKU FIELDSは入場無料)
※大人1人につき、小学生1人まで無料(未就学児は制限なし)
(例1:大人1人+小学生1人+未就学児2人→チケット1枚)
(例2:大人1人+小学生2人→チケット2枚)

■タイムテーブル
10:00- KURKKU FIELDS開場
11:00- 「EN NICHI BA」・「百宴~Prologue~」開始
15:00- 「百宴~Prologue~」終了
17:00- 「en Live Art Performance」鑑賞エリア開放
17:30- 「en Live Art Performance」開演
18:30 「en Live Art Performance」終演
20:00 KURKKU FIELDS閉場

 

チケット情報

各プレイガイドにて販売中(スマートフォンからお申込みください)

e+ https://eplus.jp/en-live-art-performance/
ぴあ https://w.pia.jp/t/enlive-c/
ローチケ https://l-tike.com/en-live-art-performance/

 

会場について

■会場
KURKKU FIELDS(千葉県木更津市矢那2503)
※アクセスの詳細はKURKKU FIELDSのwebサイトをご覧ください。

【お車の場合】
無料駐車場が2カ所あります。

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「100年後の未来はこうなるだろうな」、「自分だったらこうしたいな」、そんな風に想像することもアート活動だと思うんです。

千葉県

2023.11.09

「100年後の未来はこうなるだろうな」、「自分だったらこうしたいな」、そんな風に想像することもアート活動だと思うんです。

千葉県誕生150周年記念事業 百年後芸術祭 クリエイティブディレクター 大木 秀晃 ---------「百年後芸術祭」に関わることになった経緯を教えてください 僕はこれまで広告の仕事をメインに携わってきました。コンセプトから関わり、どうコミュニケーションするのか、アウトプットなどのクリエイティブ部分まで一貫して作っていくということをやってきました。「百年後芸術祭」のクリエイティブディレクターとして参加することになった経緯は小林武史さんから相談があったからなのですが、もっと前に遡ると、同じく小林さんが手がけていた東京・代々木にあった商業施設「代々木VILLAGE by kurkku」を2020年末にクローズする際に、どんな風に終わらせるか、というところをコンセプトから一緒に携わらせてもらったんですね。その流れもあって相談を受けた感じです。 千葉で芸術祭をやると聞いてまず思ったことは、世の中には芸術祭はたくさんもあるし、現時点で最後発の芸術祭になるので、新たにまた一つ芸術祭を増やす意味ってなんだろうというところから考えました。また、地方型の芸術祭は、旅情を感じるような、旅も含めて楽しんでもらうということが一つの推しになっていると思うのですが、千葉県は東京の隣なのでそこまで旅情を感じる、というものではないですよね。千葉で芸術祭を開催する意義や意味を明確にする必要性があるということも感じました。 「百年後を考える誰もが参加できる芸術祭」というのはそんな議論から生まれたコンセプトです。これならやる意義があるかもしれない、と小林さんをはじめとするメンバーたちが共感し合った瞬間がありましたね。 僕はコンセプトって育っていくものだと思っていて、憲法みたいに絶対守らなきゃいけないものではなく、そのコンセプトをみんなが聞いたときに、それぞれが考えて解釈するものが機能するコンセプトだと思っているんです。なので、誰もが関われる芸術祭にするには、タイトル自体が誰が聞いても反応できるもの、解釈して、想像し、アウトプットすることができるものであるべきだと思いました。「100年後の未来はこうなるだろうな」、「自分だったらこうしたいな」、そんな風に想像することもアート活動だと思うんです。芸術祭に参加できなかったとしても「百年後芸術祭」と聞いただけで何かを想像してもらえたら、そんな想いを込めています。 この自分なりに解釈してアウトプットに変えられるという「百年後芸術祭」のコンセプトは、Butterfly Studioのメンバーをはじめ、千葉の行政の方々も含めたコアメンバーを巻き込んでいく上でもとても重要だと思っていて、当初は小林さんと僕でブレストして始まったことが、次第に数人、数十人というメンバーになり、今後さらにメンバーが増えていった時に、「自分が関わるとしたらどんな風に表現できるだろう」と、意欲をそそるコンセプトにもなっているんです。これは僕の経験則上ですが、自分事になりにくいコンセプトの場合はどうしても受け身になってしまったり、参加する目的を見出しにくくなってしまうんです。でも、このコンセプトであることで、「だったらこうしよう!」と、みんながそれぞれのプロフェッショナルの領域で想像してもらえるというメリットがありました。もちろんたくさんのお客さんに参加してもらうことが最終目的なんですけど、そのもっと手前の、「仲間を増やしていく」という部分でも機能していることを感じています。 ---------en Live Art Performance制作チーム「Butterfly Studio」発足の経緯は? Butterfly Studioは、「百年後芸術祭」を作り上げていくブレストの中から出てきました。「バンドのような形態」と言ったのはもちろん小林さんなのですが、芸術祭を新しく作る意味として、サステナブルな仕組みや新たなプラットフォームをこの芸術祭が担えるんじゃないかという話が出てきて、じゃあ未来をつくるプラットフォームってなんなのかを議論しました。 僕らがふだんクリエイティブに携わっているなかで、社会的にクリエイティブを継続的に発展させていく仕組みというのがあまりないよねという話になったんです。社会的な基盤としてクリエイティブが発展できるような場になればという想いがButterfly Studioのベースにあります。 極端なことを言えば、一握りの人しかアートやクリエイティブに携われないということではなく、一億総クリエイターであると。表現することって本来誰でもやれることだし、やっていいことなんですよね。もっとみんなが秘めている才能を世の中に表現できる場所があったらいいし、評価されたり、もっと活動を継続できるような、そういう仕組みを作りたかった。そのプラットフォームを「百年後芸術祭」というアウトプットを通じて実現できないかということでButterfly Studioは生まれました。「百年後芸術祭」のコアを作るメンバーとしてさまざまなジャンルの表現者が集まってくれています。 ---------芸術祭を作り上げていく中で苦労されている点、課題だと感じることがあれば教えてください。 誰もが関わることができること、いろんな人を巻き込んで参加してもらうことと「アート」の境界線って常にせめぎ合ってると思っていて、そうするとアートとは何か? という深い話になってしまうんですけど、その問いって、結構いろんなレベルで存在していると思うんです。アートや表現することは誰もができることでもありつつ、そのすべてをアートと呼んでいいのかどうかということは、人にもよりますし、さまざまな角度で捉え方があるじゃないですか。 今自分たちが作っているものが、新しい表現の形を目指しているのだけれど、それが果たしてアートと言えるのかどうか。エンターテイメントの要素も入っているし、テクノロジーの要素も入っているし、もちろんアートの要素も入っているんですけど、それがどんな融合をしていくと“芸術表現”に至るのか、というところは難しくもあり、常に意識しながら作っています。 いわゆる現代アートというのはとても領域が狭いですよね。en Live Art Performanceで表現するものは、それよりはもっとオープンで、関わりやすく、参加しやすいものであるべきだと思ったので、百年後がこうあってほしいという一つのかたちを、表現する側と観る側が溶け込んでいくようなものにしたいと考えています。 今関わっているみんなが感じていると思うのですが、さまざまなクリエイティブの領域が融合しているので、それぞれの立場、分野から見えてなかったことが、化学反応を起こしている感じが日に日に見えてきていて面白いです。もちろんそういう設計をしながら進めてはいるんですけど、実際に混ぜてみたときに起こる化学反応は日々更新されていて、それが全部融合するのが初回公演なので、そこでまた気づくこと、感じることがたぶんそれぞれにあって、それを今後もっと磨き上げていけたらと思っています。 2023年9月30日、千葉県市原市の上総いちはら国府祭り会場で「百年後芸術祭-内房総アートフェス-」のオープニングイベントとして「en Live Art Performance」の初公演が披露された。 ---------en Live Art Performanceを制作する中で、大木さんが見どころだと感じる点は? 僕と小林さんの中で、伝えたいメッセージをどう伝えるか、言葉と音楽のバランスはどうあるべきかということにだいぶこだわりました。また、ダンスパフォーマンスとドローンをどう共存させるか、映像とダンスの共存も含めて、観客側が見たときの視覚情報のバランスにはとても気を遣いました。 舞台構成自体がすごく立体的ですし、視野角も広く、五感のすべてで感じながら体験してもらうことになるので、映像を見るとか、音楽を聞くとか、舞台を見るということ以上に、今までにない感じ方をしていただけると思います。 ---------100年後、どんな世界になっていると思いますか?また、どんな未来を望みますか? いろいろ望むことはありますが、やはりアーティストや表現する人がもっと増えていたり、見る側と表現する側の区別がなくなっていくということが実現できているといいですね。もう一つ、それに近いことかもしれないのですが、肩書きや役割、職業みたいなことと個人がもっと自由になっている世界を今からイメージします。 僕は昔、「I am not a photographer.」という写真展をやったことがあるのですが、それは、僕は写真家という肩書きはないけれども、だからといって写真展をやっちゃいけないのか? という疑問が生じたことから発想したんです。肩書きや役職を越えて活動している人は今でこそだいぶ増えましたが、それがもっと普通になっていくといいなと感じています。それこそテクノロジーがその手助けしてくれるかもしれないし、そういうものが発達すれば社会制度も変わっていくかもしれない、そうなってくれば個人がもっと自由に考えて表現できるようになっていくだろうと思うんです。 ---------この芸術祭が日本の社会やカルチャーシーンにどのような影響があることを期待されますか? まだ始まったばかりですが、嬉しかったことのハイライトとして、いわゆる企業や行政の方が、「自分たちにも100年後って関係ありますよね、そういう参加の仕方もありですか?」と言ってくださるんです。未来の社会を作っていく中で、企業や行政の影響力は大きいわけですから、そういった立場の方々が100年後を考え、それを実行し始めたとしたらそれこそ社会が変わるきっかけになりますよね。アートに興味がある人だけじゃなくて、むしろそうじゃない人たちを含めて、「百年後芸術祭」が何かを考えるきっかけになることを期待しています。 ー「百年後芸術祭」に期待していることは? en Live Art Performanceがどうなっていくのかは、自分も含めて楽しみにしていることですが、来年の春にはまさに「百年後を考える」というコンセプトに対してアーティストたちがアンサーを出してくれます。どういう解釈をして、どういう表現をするのか、それはとても楽しみです。「百年後芸術祭」という言葉を聞いて、少しでも100年後のことを考えたのであればぜひ足を運んでみてください。いろんな人が想う100年後が千葉に集まりますので、ぜひ自分の考える100年後とアーティストが考える100年後を一緒に見てもらえると楽しめると思います。 edit & text :Kana Yokota

「百年後芸術祭」に触発された方々が、千葉の各地域でうねりを起こしてもらうきっかけになれば。

千葉県

2023.11.09

「百年後芸術祭」に触発された方々が、千葉の各地域でうねりを起こしてもらうきっかけになれば。

千葉県知事 熊谷俊人 ---------まずは今回の「百年後芸術祭」開催の経緯をお聞かせください。 今年は千葉県誕生150周年ということもあり、これを機に、千葉県広域で文化芸術のうねりを起こしたいというのが、想いとして出てきていたんです。そんななかで、小林武史さんと北川フラムさんという全国的に活躍されている方々と、我々千葉県がご縁をいただくことができました。フラムさんは市原アートミックスを開催されてきた蓄積があったことも大きかったですね。「百年後芸術祭」というコンセプトが小林武史さんや皆さんから出てきて、最終的には内房総5市(市原市、木更津市、君津市、袖ケ浦市、富津市)いう形で、まず市町のエリアを越えた母体ができて、さらには100年後を考える芸術祭というコンセプトに賛同された他の地域からも一緒にやりたいという話が出てきてくれたので非常に僕らが理想とするような流れができているなと感じています。 ---------芸術祭開催にあたって、千葉県の魅力や可能性をどのようなところに見出されていますか? 僕はいつも千葉県は“日本の縮図”だと申し上げているんです。まず都市を代表する商業と工業という分野において産出額が全国で1桁の順位なんです。そして、日本の地方の象徴である一次産業である農業、水産業、こちらもいずれも1桁順位。この都市的な商業、工業、それから自然豊かな農業と水産業といった4つともがすべてトップテンに入っているというのは、全国でこの千葉県のみなので、どれだけ千葉県が日本の両面をしっかりと兼ね備えた県かということがお分かりになるかと思います。 そして、地政学・地理的な特性で言えば、千葉県というのは日本の首都である東京の隣にあります。そして成田空港があるという観点で言えば、まさに世界に最も近い場所です。そういった、非常に総合的な魅力にあふれた千葉県の中には、ある種いろんな文化が根付いています。それは都市的な人々が密集するがゆえに生まれてきた都市文化もあれば、自然豊かなそうした環境だからこそ生まれてくる文化もあります。 千葉県は令和5年6月15日に誕生150周年を迎えた。「百年後芸術祭」はこの記念事業の一環として開催される。 千葉県マスコットキャラクター チーバくん 特に僕らは三方を海に囲まれた海洋県でもありますので、特に特徴的なのは、海にまつわる文化だと思うんですね。たとえば、僕らはオリンピックで史上初めてサーフィンを開催をした地域でありますが、サーフィンといえば当然波。この波という切り口で言えば、波を克明に掘って浮かび上がらせて浮世絵にも影響を与えた「波の伊八」の存在があるなど、波に非常に関わりのある文化を持っています。漁業との兼ね合いで言えば、大漁だったときに、漁師に対して晴れ着を渡す、「万祝(まいわい)」という非常に日本の特徴的なデザイン様式が息づいています。そういった、海と関わってきた文化、習俗、デザイン、芸術こうしたものが私達の千葉県には根付いていますので、先ほど申し上げた都市的な文化、それから自然豊かなところから育まれてきた文化、そのなかでも特に千葉県において特徴的なものに光を当てて文化の振興策を作っていきたいですし、「百年後芸術祭」ではそうした都市と自然の両方を、対立軸ではなくて東京の隣の県でもあり、かつ地方県でもあるというこの千葉の魅力を発信できる芸術祭が展開できるのではないかなと思っています。 ---------10年後、20年後といった近い未来の千葉県像のイメージがあれば教えてください。 新型コロナウイルス感染拡大の中で大きく変わったのは、人々の生き方や働き方に対する価値観やスタイルだと思うんです。我々千葉県は、以前から2拠点居住の場として移住する方々が非常に多かったんです。サーフィンをした後に働くことができますし、自然とともに生きながら、東京にもすぐに行くことができる。そんな東京との距離感に魅力を感じて、2拠点生活や移住をされる方が増え始めてきた中で、新型コロナウイルスの感染拡大があり、テレワークが一気に社会として浸透しました。千葉の自然豊かな環境でテレワークをするスタイルが特に増えて来たなというのを実感をしています。 10年後20年後というスパンで考えれば、より技術は進化していきますし、働き方のスタイルもさらに多様化していくでしょうから、ますます千葉の自然豊かな環境で東京や世界というフィールドで仕事をするということができるようになってくると思います。そういう意味では、より千葉県が豊かなライフスタイルを実現する最も適した場所として、より多くの方々に注目をされるようになってくると思っていますし、そういう社会や新たなライフスタイルを実現するための支援策や取り組みを今加速化しているところです。働くこと、生きること、自然と触れ合うこと。今まではそれらを手に入れるために場所を移動していたけれど、すべて千葉県内で実現することができるということを、全国に発信をしていきたいと思っています。 さらには、その流れの中で、自然豊かな環境の中で芸術や音楽を楽しむことができるという千葉県らしさももっと広げていけると思うんです。たとえば市原アートミックスも、自然豊かな環境の中で現代アートを楽しめるという、東京では実現できない感動体験や刺激が得られるということを多くの人が実感したと思うんです。そして、今千葉は「音楽フェス県」となっておりまして、世界でも屈指の大きな音楽フェスが、春夏秋冬いつでも楽しめるようになってきています。もちろんホールの中で聞く音楽というのも充実していますけれど、やはり自然豊かな環境で音楽を聞くことの豊かさがあると思います。これらをもっと大事にしていきたいと思ってますので、千葉でしか味わえない豊かな生き方というのを、多くの皆さんが実感して、千葉に住んで暮らしている世界を、僕らは10年後20年後に作りたいと思っています。 ---------実際にそういったライフスタイルの支援策を具体的に進めているのですか? そうですね。たとえばワーケーションのように、旅行と仕事が兼ねられるような新たなスタイルも出てきていますので、そういう拠点を整備するときに我々県としても支援していますし、そういう生き方があるということそのものを発信するようにしてきています。実際に私の知人もそういう生き方を満喫してる方々が多いんですよ。 千葉県にはジビエ文化もあり、イノシシやキョンなど、農家を守るために駆除した上で、そのお肉をしっかり自然の恵みとして活用していただくという究極のサステナブルな生活スタイルを、テレワークで最先端のIT企業で働きながら実施されてる方々もたくさんいます。そういう生き方をぜひ広げていきたいですね。 KURKKU FIELDSの存在も大きいと思っていて、コンセプトがしっかりしていて、哲学もあって、そしてアートやデザインもあって、豊かなライフスタイルを総合的にコーディネートされた形で展開していただいているので、まさに我々の目指すべき社会をあの場所で具現化してくれているなと思います。 ---------100年後、どんな未来を望みますか? 100年後となるとまず一つ言えるのは、人口が減少していく社会の中で、おそらく日本人以外にも多様なルーツを持つ人たちがともに暮らしていけるようになっていることが考えられますよね。技術も進化をして、AIであったりロボットであったり、生身の人間以外にも社会にいろいろな形でなくてはならない存在が入ってきていると思います。そういう意味では今多様性というのが言われておりますが、僕らが今思っている多様性よりも、もっと広い次元で多様性のある社会が構築をされていると思います。そういう中で、その多様性を最終的に“価値”に落とし込んでいくためには、多様性を受け入れて、そしてともに生きていけるような、共通の想いや価値観、文化など、いろんなものが必要になってくると思うんです。 ですから、「百年後芸術祭」というものがこの千葉県誕生150周年の一過性のものに終わらずに、このコンセプトなり芸術祭というものがずっとその後も、千葉県の中で生きて広がっていくことによって、100年後の多様な社会のみんなの共通のよりどころというか、そういう存在に発展してくれることを期待しています。 そして、僕らが常に考えなければいけないのは、千葉という場所が日本や世界でどう貢献できるのか、どういう新たな価値を僕らが提示できるのかということが大事だと思っているんですね。東京や都市の中で生きてる人の中には、「引退したら田舎で生活しよう」みたいな、何となくおぼろげな人生イメージを持っている人たちが多いと思うんですけれど、千葉はそうではなくて、まさに働きながら自然とともに生きていくライフスタイルが実現できるんだよということもしっかりと提案したいと思います。 千葉は、おそらくこれから分散型エネルギーの見本的な場所になると思います。我々は太陽光発電、洋上風力発電、火力発電もあり、さまざまなエネルギーが集まっています。そういった分散型のエネルギーとしての姿も、千葉県というのは日本の中で特徴的な場所になるでしょうから、SDGsというキーワードがよく言われておりますけれども、そうした新たな社会のモデルが千葉から進んでいきますので、そうした姿も、我々としては世界にしっかりと発信をしていきたいと思っています。 ---------熊谷知事のオフの過ごし方、千葉好きなスポットなどがあれば教えてください。 千葉で暮らしていて本当にいいなと思うのは、子どもたちと休みの日に食事していて「これからイチゴ狩り行こう」とその日に決められること。車で20分も行けば大自然の中でイチゴ狩りができますし、一時間行けば外房で地引網ができる。普通に生活していて、ふらっと大自然でのアクティビティができるところが家族で生活をする上で魅力的だなと思います。一方で、マリンスタジアムで千葉ロッテマリーンズの応援をしたり、幕張メッセで行われる大きなイベントなどを見に行ったりといった、都市的な生活も謳歌することができますので、思いついたときにやりたいことが全部同じ県でできるというのは本当に魅力的なんですよ。 ---------「百年後芸術祭」に期待することを教えてください。 まずは、フラムさんに市原アートミックスをやっていただいているので、その土壌は必ず生かされるんだろうと思っていますので、そこからさらにフィールドが広がり、市原以外の街におけるアートがどのように溶け込んで、「こんな場所でアートを展示するんだ!」というような新たな驚きを、個人的にも楽しみにしています。そして、今回はやはり小林武史さんも入っていただいてますので、音楽の部分が合わさって、五感全体で楽しめる芸術祭になると思います。 そして、千葉の方々がまず千葉に自信を持って、「千葉の魅力ってここなんだ!」と実感していただくこと、そして、自分もこういうふうに行動してみようというきっかけになって欲しいです。芸術祭に触発された方々が千葉の各地域でうねりを起こしていただきたいですし、県外から来た人たちには千葉の魅力を実感をしてもらい、最終的には千葉に来ていただいたり、二地域居住していただいたり定住していただいたりという、そういう波及効果が出ることを期待をしています。 ---------千葉県誕生150周年事業としては、どのようなことを目指されているのでしょうか? 目的は大きく二つあります。今までは市町村それぞれで文化的な取り組みをやってきたと思うのですが、今回は千葉県全体で歴史であったり文化的資源だったりを一緒になって盛り上げていくという、市町村の枠を越えて一緒にやるからこその母体がしっかりこの機会に生まれてほしいと思っています。「百年後芸術祭」はそういう意味で、市町村を越えて行われる一つの取り組みです。そして、「百年後芸術祭」だけでなく、いろいろな場所で市町村の枠を越えた取り組みが行われますので、それがまず一つ、僕らの大きな目的です。 もう一つは、もう行政だけで目的を完遂できる時代ではないので、民間をはじめ、企業やいろんな方々と組んで実現をしていく中で、この150周年がある種、千葉県のことを考えていただくいろんな方々とコラボするいいきっかけになっています。前々から地域に貢献したかったという方々が、この150周年を契機に、県庁の門を叩いてくれていますので、それは150周年が終わっても、信頼関係や連携事業が息づいていることになるので、その二つの目的は、関係者の皆様方のおかげで少しずつ形になってきていると思います。「チーム千葉」として、一層チーム力が高まるきっかけになればと思っています。 text :Kana Yokota

「百年後芸術祭」を通して各自治体の様々な取り組みが”オーガニック”につながるとともに、持続可能な地域づくりへのチャレンジを実現したい。

木更津市

2023.11.09

「百年後芸術祭」を通して各自治体の様々な取り組みが”オーガニック”につながるとともに、持続可能な地域づくりへのチャレンジを実現したい。

木更津市長 渡辺芳邦 ---------「百年後芸術祭-内房総アートフェス-」開催の経緯をお聞かせください。 もともとは小林武史さんと市原市と千葉県の三者で話を進められていましたが、千葉県誕生150周年を記念した催しにしたいということで近隣市も一緒に開催できないかとお話をいただきました。そこで君津市、袖ケ浦市、富津市ともコミュニケーションを取り、5市で開催すればたくさんの方に内房総を見ていただけるだろうということで百年後芸術祭に加わりました。木更津市では、人と自然が調和した持続可能な「オーガニックなまちづくり」を進めています。そのような背景があることに加え、百年後芸術祭では環境を意識したものにしたいという意向もお聞きしていましたので、我々としてはその考えに賛同した側面もあります。その分、個人的には上総丘陵に位置する市町も含めて里山としての一体感を出しすなど、オーガニックの理念を盛り込みながら進められればという思いもありましたが、まずは5市で力を合わせていこうということになりました。 ---------「オーガニックなまちづくり」について、具体的な取り組みなどを教えてください。 そもそものきっかけは小林さんが木更津で始めた農業法人 耕す(現・KURKKU FIELDS)を見学したことです。私が市長に就任して間もない頃なので10年ほど前ですが、その頃の耕す農場では有機農業への取り組みを通じて自然が好きな方々が集まりネットワークを作っていました。そのような人と人とのつながりを見て、これからのまちづくりには「オーガニック」がキーワードになるのではないかと感じました。ここで言うオーガニックとは有機農業だけではなく、まちづくりを進める中で必要な様々な取り組みが有機的につながり、持続可能な地域を目指すことを意味する言葉として用いています。 当時の木更津はアクアラインの通行料金引き下げの効果によって活性化し始め、市内を訪れる方や移住者も増え始めていました。その影響で都市化への期待が高まっていたのですが、木更津が本来持つ価値を最大化して地域の魅力を高めていくには自然の豊かさを活かしていくべきだろうと考え、だからこそオーガニックというキーワードでまちづくりをしていこうと市の中で議論を進めていきました。そして2016年には具体的な理念をまとめた「オーガニックなまちづくり条例」を施行しています。現在のところ、例えば自然保護活動や農業振興、産業支援の取り組みなどを行い、食育計画の一環として、木更津市内のすべての公立小中学校の給食には市内で生産された有機栽培米を使うことなども精力的に進めています。また、干潟の見学やKURKKU FIELDSと連携した農業体験など環境教育も実施しています。これは海も山もある木更津市ならではのものだと言えます。 ---------渡辺市長は生まれも育ちも木更津市ですが、この地域の魅力はどんなところにあるとお考えでしょうか。 やはり自然は重要な魅力ですから、多くの人が自然に触れられるように市内の公園を再整備し、自然に触れ合う機会を増やしながら木更津らしい豊かさを感じてもらおうと考えています。例えば木更津駅から徒歩15分ほどの場所にある鳥居崎海浜公園では、海岸線に沿ったテラスの設置や地域の食材を取り扱う飲食店、海を眺めながら温泉を楽しめるホテルが入った複合施設の設立などを行いました。公園内にあるカフェは、夕陽と富士山を同時に見られる千葉県ならではの景色を眺めながらコーヒーを楽しむことができます。ぜひ多くの方にもこの素晴らしい景観を体感していただきたいですね。 2022年3月にリニューアルオープンした鳥居崎海浜公園。美しい夕陽を見ながら食事が楽しめる絶景スポット また、木更津は江戸時代から港町としての側面を持ち、江戸との海上交流が盛んでした。その関係でこの地域には歓楽街が形成され、江戸の文化や風習が入ってきて芸者文化も盛り上がりました。今でも木更津会館という芸者の育成や芸者の予約手配などを行う建物は残っていますし、実際に芸者を呼んで花柳界を体験することもできます。こうした伝統文化も木更津の魅力のひとつだと言えます。 木更津駅みなと口(西口)を出てみまち通りを進んだ先にある「木更津会館」 ---------木更津市では百年後芸術祭でどのようなイベント開催やアート作品の展示をしていく予定でしょうか。 10月21日(土)にKURKKU FIELDSで小林さんと映画監督の岩井俊二さんによる音楽映画の楽曲を披露する「円都LIVE」を開催します。また11月5日(日)には音楽や映像、ダンスやドローンなどを融合させた「en Live Art Performance」や、千葉の食材を屋台形式で味わえる「EN NICHI BA」を開催します。アート作品の展示は現在のところ検討を進めているところなので詳しいことはお話できないのですが、私たちとしては、木更津市の特徴である海と里山に関連したアート作品とともに、街中を歩いていただくきっかけになるようなものも常設できればと期待しています。 ---------100年後の木更津市がどのような地域になっていてもらいたいとお考えでしょうか。 日本では少子高齢化を筆頭に様々な課題があり、場所によっては今後消えて行ってしまう可能性のある自治体もあります。幸いにも木更津市は、この数年で若い世代の方の移住も増えているため人口が増加傾向にありますので、この先もいつまでもにぎやかで元気な街であってほしいと思っています。そのためにも、木更津らしい豊かさを維持し、東京近郊でありながら生活の中に自然が溶け込んだ暮らしができるようになっていかなければなりません。本日紹介したオーガニックなまちづくりという考え方は、そんな未来を見据えたものでもあります。 木更津市役所駅前庁舎から眺める木更津の街 ---------最後に、「百年後芸術祭」への期待をお聞かせください。 今回の開催地である他の自治体とは個別にコミュニケーションを取ることはありましたが、5市が一体となって何かを開催するということはありませんでした。千葉県には様々な可能性を秘めたコンテンツがありますから、私たちが力を合わせれば魅力的なアイデアを実現できると思っています。この百年後芸術祭をきっかけに多くの新しい取り組みにチャレンジしていきたいですね。もちろんそれなりの洗練さも必要ですから、無闇矢鱈と何にでも取り組むのではなく、それぞれがつながりながら統一感を持って進められるよう、ルールの設定が必要であることも忘れてはなりません。 また、木更津市としては、地域の中での経済循環を円滑にすることや、自然の豊かさをこれまで以上に市民生活と融合させていくことなどが課題だと考えています。これらを解決するヒントを百年後芸術祭を通じて得られることにも期待しています。 Photo:Eri Masuda Interview:Kana Yokota  text :Tomoya Kuga

わきまえて、生きるー。「Kanji Kobayashi Presents Special Dining for 円都LIVE」レポート

木更津市

2023.11.09

わきまえて、生きるー。「Kanji Kobayashi Presents Special Dining for 円都LIVE」レポート

「百年後芸術祭」初となる「EN NICHI BA」が清々しい秋晴れの中開催 10月21日(土)、清々しい秋晴れで、日中は上着がいらないくらいの陽気のなか、未来の食を考え、体感するイベント「EN NICHI BA(エンニチバ)」がKURKKU FIELDSで開催されました。 当日は11時オープン。千葉で活躍されている農家さんや、レストラン、食品加工メーカーさんなど、15店舗の屋台がシャルキュトリー前の広場に並びました。ジャムやヴィーガンフード、ハチミツなど、美味しそうな商品を試食したり、はまぐりやおむすびを食べたり、夕方の「円都LIVE」を楽しみに来ているお客さんがテラス席や芝生の上でゆっくりとランチを楽しむ様子が見られました。 午後1時半、Special Diningの参加者はインフォメーションで受付開始。胸が高鳴ります。20名近くの参加者を前に、まずは「EN NICHI BA」のクリエイティブに関わるライフスタイリストの大田由香梨さんからご挨拶。  今回のこのイベントは、「百年後芸術祭」の一環として開催されたもので、「EN NICHI BA」とは、「縁日(ENNICHI)」、「市場(ICHIBA)」、「千葉(CHIBA)」 が融合した食と学びの新たな食体験の場なのだと教えてくれました。 「千葉県は山の幸、海の幸に恵まれた、豊かに受け継ぎ守られてきた食文化があります。この豊かな食文化を百年後にも伝えていきたい、そんな想いを込めて開催しました。今日は和歌山の『villa aida』のシェフ小林寛司さんによるお食事と円都LIVEをみなさんに楽しんでいただきますが、お食事の前に少しファームツアーにご案内したいと思います。このファームツアーに参加していただくにあたり、日常の感覚から少し離れていただきたいと思っています。私たちは日々、食べたいもの、欲しいものがスーパーですぐに手に入る環境で生きていて、パスタが食べたい、ハンバーグが食べたいとお料理から先に考えているかと思いますが、KURKKU FIELDSはそうではなく、今、畑で収穫できる旬な野菜、ここで育った鶏や猪、水牛のミルクでできたチーズなど、今ここにあるもの、風土にあったものからその日食べるものを発想します。それを私たちがどう身体に取り込むか、そんなことを思い、感じながら、ファームツアーを体験し、お食事を楽しんでいただけたらと思っています」(大田) そして、KURKKU FIELDSの農場長である伊藤雅史さんと循環の仕組みづくりを担当している吉田和哉さんにバトンタッチ。 「気持ちのいい秋晴れの日にようこそ!積極的に畑に入って、土を踏んで、匂いを嗅いでみてください」 通常、一般の来園者は入ることのできないオーガニックファームエリアを進んでいきます。10月、千葉県では収穫できる野菜が限られているそうですが、そんななかでも今年は暑さが続いたため、オクラやトマトなどの夏野菜がまだ収穫できるのだそう。可愛いマイクロきゅうりも発見しました! 夜になると猪が土の中の虫や微生物、どんぐりや栗などの食べ物を求めて入ってくるため、畑の電気柵は欠かせないと言います。ただ、今年の猛暑のせいでどんぐりが大きく育たず猪の食べ物が少なくなってしまったことが原因だと聞いて、可哀想な気持ちにもなります。野生の動物たちは、気候によっては日々食べるものの確保が困難になってしまうのです。 「実は先週の大風でとうもろこしが倒れてしまったんです。その時はアライグマが落ちたとうもろこしを食べてましたね。あとはオクラ、インゲン、トマト、マイクロキュウリ、カボチャなどが見つかるかと思います」。 広大な畑をゆっくりと歩きながら、次に向かったのは鶏舎。KURKKU FIELDSでは鶏たちを地面に放して飼育し、そこに隣接した運動場をつくることで鶏たちが自由に走り回れる環境を整えているといいます。本当に伸び伸びしていて居心地良さそう! 「美味しい餌と美味しい水、広々とした運動場など、鶏にストレスのない環境を作ってあげて、健康を維持できるように育てています。その代わりどうしても一個あたりのたまごの価格は高くなってしまうのですが、ここではいつも私たちが食べているたまごは鶏が産んでいて、その鶏はどんな環境で育っているのかを知ったり、想像してもらったり、そんなきっかけになればと思います」。 「すべてのものに神が宿る」。日本人固有のアニミズムを五感のすべてで感じる6皿のアート たった30分ほどのファームツアーでしたが、畑の中を歩くことに慣れていないせいか、じわりと汗をかくほど。午後2時、お腹も程よく空いてきて、Special Diningの会場である「フラック棟」に近づくと、炭火の香りが漂ってきました。 大きなお肉は千葉県の猪。これからみんなでいただくために、じっくりと時間をかけて火入れをしてくださっているのはKURKKU FIELDSの佐藤剛さん。 「今日は千葉の食材と、KURKKU FIELDSで育った食材でお料理を作りましたので、ぜひ楽しんでください」とは『villa aida』のシェフ小林寛司さん。 金木犀の香りのする梅ジュースをウェルカムドリンクにいただきながら、ゲストの名前が呼ばれるまでの少しの時間を秋風とともに楽しみます。 そして、通されたお部屋は、白を基調としたテーブルセッティングが見事なパーティー会場。オリーブや丸太のトレーなど、グリーンとウッディなアクセントがとても洗練されていて、ライフスタイリストとして活躍されている大田さんのセンスが光ります。 こちらのフラック棟も一般には開放されていない場所。草間彌生さんやアニッシュ・カプーアなどアート好きにはたまらない人気作家の作品が飾られていて、まさにスペシャルな空間です。 一人一人、自分の名前が書かれた席に着席し、いよいよSpecial Diningスタート。コース名は「ANIMISM」と書かれています。 「ファームツアーでは、まさに今の“実り”を見ていただけたのではないかと思います。そして、ここ最近は気候変動もあり、地球が私たちに強いメッセージをくれていると思うのですが、畑の中でもそういった自然との会話ができたのではないでしょうか。今回のお料理のコース名は『ANIMISM』です。アニミズムとは、自然界には霊魂のような存在があるとする、自然信仰を意味する言葉です。日本人は縄文時代の頃から、風、雷、雨、木、石、大地など自然界のすべてのものに神が宿っていると信じていた民族です。海外に行って日本に帰ってくると特に感じるのですが、アニミズムという信仰心こそが、食の多様性や可能性を豊かにしていると思うんです。特に千葉は海に囲まれていて、農作物も海産物もとても豊かです。100年前、それ以上前の方々が種を植え、自然を繋いできてくれたからこそ今目の前にある食材をいただくことができる。そんな感謝の心でお料理を楽しんでいただけたらと思います」 最初にいただいたのは、摘果したグレープフルーツをくり抜いた中に、ケールと猪や鹿の骨や肉からとったコンソメとケールを和えたスープ。清々しいグリーンとマイクロキュウリの花がまず目を楽しませてくれて、中のあたたかいスープで緊張を解きほぐしてくれる。そんなホッとする一品です。 <広く深く> 次は、ジャガイモと自然薯に玉ねぎと白ワインのフォームを和えたもの。甘いじゃがいものピュレと、粘りのあるなめらかな食感の自然薯とふんわりとしたフォームが口の中で混じり合い、広く深く、というメニュー名通り、土の中で育まれてきた大地の広さや力強さを感じます。やさしい。。 <明瞭、歴然> そして次は、バターナッツのスープです。大きめのお皿にたっぷり。甘さとコクのあるバターナッツですが、bocciのピーナッツペーストのムースと塩ゆでのおおまさりとともに絡めながらいただいていると、あっというまにお皿の底が見えてしまいました。千葉といえば落花生ですが、こうしてムースにしていただくとまた違った楽しみ方ができるという発見も。バターナッツとの相性も抜群です。美味しい野菜って、スープにしてたっぷりいただくのが一番満たされるし、贅沢なのではないかと思わせてくれました。 <身近な自然で食を整え> 4皿目は、麦のリゾットと色とりどりの温野菜。まさにさっきファームツアーで出会ったマイクロキュウリやオクラの登場です。カブや大根もちらり。シャキシャキとした歯ごたえと野菜そのものの甘みを楽しみながら、下に隠れた麦のリゾットとともにいただきます。身近な自然、まさにKURKKU FIELDSの恵みがたっぷりつまった一品。何度も何度も食感と野菜同士のハーモニーを味わえる、パーティーのように楽しい一皿でした。 <風土と共に> あたたかいメニューが続き、すでに身も心もほぐれてほどよく満たされてきた頃、5皿目の登場です。外で炭火で焼いてくださっていた千葉県の猪肉と蓮根のラビオリ、そして焼き大根がお皿の上でアーティスティックに盛り付けられています。弾力のある食べ応えのある猪はコクのある赤ワインソースと好相性。シャキシャキとした蓮根の歯ごたえともっちり食感がやみつきになるラビオリ、香ばしい大根。添えられたオリーブのサブレや、シナモンリーフの香り、ローズマリーといったハーブの心地よい香りを楽しみながらいただく一皿は、自然に抗うことなく、力強く、ていねいに生きること、大地に感謝しながら生きることを教えてくれる、素晴らしいお料理でした。 <わきまえて生きる> そして、最後の6皿目はいちじくと椎茸を使ったデザート。いちじくの葉のミルクアイスとイチジク煮、そしてKURKKU FIELDSのチーズ職人 竹島さんのチーズ、生椎茸をスライスしたものを一緒にいただきます。いちじくの葉っぱをミルクに漬け込み香り付けしたアイスはさっぱりしつつもいちじくの香りがふわりと広がる上品な味わい。いちじく煮は千葉県香取郡にある酒蔵「寺田本家」さんの少し甘味のあるお酒に浸けた後、オーブンでキャラメル状に焼き上げたもの。ほんのりと秋の香りを運んでくれる生椎茸といちじくの新鮮なマリアージュに感動を覚えた一皿でした。そこにある旬のものを、美味しくいただくこと。私たちは自然の一部であり、自然に生かされていることをわきまえる。そんなメッセージなのかな、なんて想像しながら至福の時間を味わいました。 食事の後半には、円都LIVEに出演予定のチェリスト、四家卯大さんが演奏をしてくださるというサプライズも。バッハ 無伴奏チェロ組曲 第1番「プレリュード」にはじまり、パブロ・カザルス「鳥の歌」、サン・サーンス「白鳥」などチェロの名曲を奏でてくれました。「チェロにも神様が宿っていると思う」。そんなお話を四家さんがしてくれたことで、供される食事、サービス、この空間のすべてにも神様の存在を感じて、崇高なひと時となりました。 シェフのパートナーであるソムリエの小林有已さんによるワインのペアリングも料理や素材の美味しさを引き立てる素晴らしいセレクトで、気づけば5〜6杯飲んでいました。 「私は料理を作ることが好きなんですけど、いつも辛味とか香りにこだわってしまって。今日のシェフのお料理は素材のおいしさを前面に感じられるもので、すごく感動しました」 そんな参加者の感想を最後に、神がかった夢のような時間は幕を閉じました。 「大人数で食べる料理をつくるのが得意ではないので、予定より人数を絞って開催して良かったなと感じています。KURKKU FIELDSには何度も来ているので、食材もスタッフのみんなも知っているしやりやすかったですね。今回は百年後芸術祭の一環としたイベントということで、メニューの一皿一皿に僕なりのメッセージを込めてみました。アートや映画と一緒で観た人に委ねる感覚で、食べてくださるみなさんに委ねました」とは小林寛司さん。 「百年後芸術祭初のEN NICHI BA、スペシャルダイニングイベントを無事開催することができました。寛司さんとご一緒してこの場をつくり上げる中で、“わきまえて生きる”というメッセージが自分の中で大きく響きました。通常であれば写真映えなど、刺激的な空間を求められることが多いのですが、今日は時間的にも食事が終わるのが夕暮れなので、夕陽が射した後にだんだん暗くなるように、心が落ち着く、整う、そんな環境づくりに徹しました」と大田由香梨さん。 外に出ると、ピンクとオレンジ、そして水色のグラデーションが空とKURKKU FIELDSの大地を彩っていて、心が洗われるような感動的な景色が広がっていました。「今日は日常の感覚から離れてみてほしい」。最初に大田さんが話されていましたが、この感覚を日常にしたい。自然とともに生きていることを毎日感じて生きていきたい。心からそう思える素晴らしい時間でした。感謝。 Photograper : Takahiro Kihara  Text:Kana Yokota