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2024年4月27日(土)〜5月19日(日) 土日祝日のみ [11日間] | 山武市

度重なる巨大地震による海底隆起と、海から打ち付ける砂の堆積によって拡大してきた砂の大地では、川の流れもまた不規則だった。人々は田を作るため、砂の大地の表面の安定に寄与してくれる芝や、ススキといった植物が占有してきた表層の土壌を使って堤を作る営みを継続してきた。川に沿った地域の土壌は、古くから人の手によって開墾され、ススキなどの背の高い植物が伐採されたことによって本来の自然の遷移では珍しい半寄生植物や食虫植物たちの生態系が現れた。ススキが取り除かれた跡には直径30cm深さ10cmの小さなクレーターが残る。食虫植物達はお互いに住処となるゾーンを譲り合い、地層のように綿密な層を為しながら分布体を作っていく。MANTLEはその窪みを一個の盆鉢に見立て、その中で「蠱毒」という複数の毒虫を入れて闘わせて最も強い毒虫を勝ち残らせる呪術に見立てたCGシミュレーションを作成。食虫植物にとって、環境への人為的介入は全くの偶然的な幸運に過ぎないが、人間達が直面する不確実な試練のようにも見えるこの盆鉢は、どのような混乱を生み、何を決断させるのか。盆鉢シミュレーション=蠱毒は、生き物同士を闘わせ勝敗を決めるという傲慢な遊びに興じているわけではない。植物たちは不毛な争いをしているのか、均衡や共存の道を進んでいるのか。もしかすると植物たちはこの不安定な盆鉢から皆で抜け出す方法をすでに知っているのかもしれない。

©kenji agata

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