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2024年4月27日(土)〜5月19日(日) 土日祝日のみ [11日間] | 山武市

幼い頃の私は「人は海と空の境目から生まれて、またそこへ帰るのではないか」と想像していた。毎日海を見つめていると、人はそんなことを思うようになるのかもしれない。 沖縄には「ニライカナイ」という他界概念がある。 「はるかに遠くて、ほの明るく、何か物悲しく、なつかしく、いろいろのよいもの、生命も、幸も、物の種も一切のもののあるところ。「海の彼方」という現実とからみあった想像の理想郷、それがニライカナイだ。」(吉野裕子全集 第一巻) 海の側に暮らすことによって無意識に染み込んだ波の音や、ゆらぎ変化し続ける色と光が「ニライカナイ」や「西方浄土」、そして私が子供の頃想像していたような生と死を含んだイメージと結びつくのはごく自然なことのように思う。 もう会えなくなったあの人や海の向こうの大切な誰か、100年後の世界を生きる人たち、そしてそれらを包む大きな海と空へ向けて旗を振る。私たちは今、ここに存在しているのだというシグナルとして。

©kenji agata

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