アート

私が立つ場所はかつて海岸線だった

2024年4月27日(土)〜5月19日(日) 土日祝日のみ [11日間] | 山武市

柴原の岩塊を前にした時、動き続ける大地の痕跡を見た気がした。岩塊の一部は土地改良の際に埋められてしまい、現在その場所は畑が広がっている。そこでは確かな人間の営み実感する。私は3.11の経験から地面とは何か、あるいはそこに建つ構造物、さらにはそこで行われる人間の営みはいかにして成り立ち得るのかという事を考えてきた。
埋められてしまった岩塊と当時の様子をさらに知りたくなった私は町の方達の協力のもとインタビューを繰り返し行った。その中では土地改良が行われる前は岩と岩の間を抜ける農道があり耕運機でその道を移動した事や木戸川の工事の際にダイナマイトを使いものすごい量の岩を砕いて撤去していた事など断片的でリアリティのある情景が見えてくる。
またある方は「3つ目の岩は周りが田んぼの中に1区画だけが原野になっていたからよく覚えている。ちょうど大人が2人で囲えるくらいの大きさだったんじゃないかな。今で言うと高宮さんの家のくねの辺りにその岩があったと思う。」と語っていた。他にも土地改良の様子を知る方から「岩の脇に穴を掘ってそこに落としちゃったんじゃないかな。今の木戸川の横の用水路の手前だったと思うけど、正確な場所も深さも分からない」と語る。
繰り返すインタビューの中で徐々に浮かび上がった埋められたとされる場所を掘ってみる。
半世紀近く前に埋められたその岩を起点に人間の営みや環境との接点についてそこに在る風景を通して現在の立つ場所から考えてみたい。

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