ストーリー

参加アーティストのインタビューや、アート・食・音楽に関する対談の様子、芸術祭のめぐり方やアート作品のご紹介など、百年後芸術祭にまつわるストーリーをお届けします。

木を植えることは利他そのもの。イオン環境財団が、今そして百年後の「平和」を願い、市民とともにおこなう環境への取り組み

山武市

2024.05.13

木を植えることは利他そのもの。イオン環境財団が、今そして百年後の「平和」を願い、市民とともにおこなう環境への取り組み

左から、公益財団法人イオン環境財団山本さん・降旗さん ーーー公益財団法人イオン環境財団はどうして創設されたのでしょう? 山本:イオン環境財団はイオン創業者であり、現イオン株式会社名誉会長相談役でもある岡田卓也によって1990年に創設されました。岡田は1925年生まれ。今年(2024年)で99歳になります。戦争や、故郷の三重県四日市市で四日市ぜんそくがおこった時代を生き、身近に人のいのちや自然が失われていく経験をしています。そのなかで「平和」を大切にし、平和を守るために、人や動植物、自然は共存共栄していかなければならないという思いを抱きました。 実際のところ、もし終戦がなかったら、今のイオンはなく、私たちもこうしていないだろうと私自身も想像する時があります。「戦争」というのは、最大の環境破壊で、人のいのちも自然も一瞬で壊してしまう。だからこそ、平和という大切なことをどうやったら守れるのか、人と自然が共存共栄するために社員の一人ひとりが出来ることがないかを社内でもよく話しています。また、当財団は日本で初めて地球環境をテーマにした企業単独の財団法人として設立されており、日本を代表する想いで取り組んでいます。財団が株式会社とは別に存在しているのも、営業数値に影響されずに社会貢献活動を続けるための覚悟のあらわれなのです。 イオンの誕生秘話をまとめた絵本。『町が生まれ 森が広がるー岡田卓也のものがたりー』(令和元年発行)四日市市や千葉市では全小学校に配布されている ーーーミッションと活動内容を教えてください。 山本:「平和の追求・人間尊重・地域社会への貢献」を基本理念に、同じ志を持つ団体への助成や個人への顕彰等をおこなったり、植樹や環境教育活動に取り組んだりしています。たとえば、助成事業では、生物多様性や里山環境の保全に、実際に最前で力を尽くしていらっしゃる非営利団体の皆さまに総額1億円を限度に助成をしています。他にも、人間だけではなく動植物にとっての生きやすさを考えていくために、千葉市動物公園さんと2023年に連携し、生物多様性に資する活動にも取り組んでいます。植樹の活動では、世界で累計1,268万本を超えた 木を植えてきました(2024年2月時点)。北海道から沖縄県まで日本各地だけでなく、タイやカンボジアなど海外でもおこない、中国の万里の長城では100万本を植樹。植樹するときには、地域の方や小学校の子どもたち 、イオンピープル が一緒に地域の自然環境に最も適した、その土地本来の 木を数十種類とりまぜて植えています。 2019年の様子 また、山武市百年後芸術祭の開催地でもある、山武市九十九里浜には、2019年から2021年にかけて累計1万5千本の植樹をおこないました。近年の九十九里浜は松くい虫被害や湿地化による疎林化が進行していたり、東日本大震災では津波で塩害に遭ったりしています。他にも千葉県内では、浦安市にて東日本大震災時に液状化で噴出した土砂を盛土として活用する植樹活動もおこないましたし、野鳥の森の再生を目指して千葉市泉自然公園でも植樹活動をしたり、さくらの苗木を植えたりもしました。再生可能エネルギー活用の啓発・普及および環境教育を目的に、鴨川市立鴨川中学校に太陽光発電システムの寄贈もしています。 ーーーイオン環境財団の活動と百年後芸術祭のテーマはどのように連動していると考えていますか? 降旗:コンセプトに書かれている「100年後を思うことは利他そのもの」という言葉に通ずるところを感じます。自分という存在は100年後にはもう存在しないですよね。つまり100年後を考えることは、自分はもうこの地上にはいないという前提で考えること。 木を植えることもおなじです。木が育ち、人が育つ、その先の未来はどうなっているかわからないけれど活動を重ねていく。我々のやっていることもまた利他ですよね。また私たちが非常にこだわっているところは、参加者に自らの手で木を植える体験をしていただくことです。その1本の木から何を想像するか。誰かがやるのではなく自分たちでやる。その体験にこそ価値があると考えています。 山本:木を植える行為の結果はすぐには出ないんですよね。50年、100年先のことを考えて普段活動しているので、この「百年後芸術祭」はまさに私たちの活動とマッチすると思いました。 また、「百年後芸術祭」は未来を作っていくための共創の場とのことですが、この共に創っていく部分も私たちの活動と共通点があると思っています。イオンは全国各地に店舗があり、店頭でたくさんのお客さま に直接ボランティアの募集もできますし、お取引先さま や株主さま 、地域に住んでいらっしゃる方や学校の生徒さんなど、さまざまなステークホルダーとかかわりを持っています。私たちはそんな一人ひとりの方とも自然の大切さを共有したいと考えています。 ーーー 活動を通しての変化や気づきなどはありましたか? 降旗: いろいろな方と一緒に、植樹をしたり、自然の大切さを共有したりしているときには、色々な意見もあり 、人間関係が変わり、行動が変化し、さまざまな対話をすることになります。我々は木を植える機会を提供しているものの、その体験から生まれるものは「植樹された木そのもの」だけではなく、「お互いを尊重しながら 対話を繰り返す行為自体からなにか」が生まれているように思います。 山本:その「なにか」は心の平和、心の豊かさ、生き甲斐のようなところに繋がっているような気がしています。ちょっと振り返り、立ち止まり、考え直すような。 降旗:もしかしたら、植樹などの社会貢献活動を通した新しい人間関係のネットワークの可能性みたいなものなのかもしれません。私自身も社会貢献活動をやっている中で、新しい形の人のつながりみたいなものの可能性を作れたらなと思う時が今までもありました。人との繋がりとして、地縁や血縁がありましたが、きっとこの新しい人間関係は一人ひとりの生き甲斐にも繋がっていくのだろうなと思います。 山本:実は、イオンピープルは社員だけでも57万人もいます。そ の中には植樹を体験できていない人 もいるので、さまざまな地域で、木を植える体験を通して新しい自然との関係性を考えたり、環境への気づきを得たり、環境を思う心を養ったりなど、いろんなことが生まれてほしい と思っています。きっと、活動の一つひとつが社員にとっても新しい「なにか」に繋がっていくのではないでしょうか。4月22日のアースデーの日に、「百年後芸術祭」の会場にもなる砂浜であり、イオンピープル で植樹した森のまわりでもある場所でビーチクリーンも行う予定です。こちらも楽しみです。 4月22日の実際の様子 ーーー百年後芸術祭では「百年後」のことを考えていますが、イオン環境財団さまの思い描く「百年後」や、「百年後」のために今必要だと考えられていることはありますか? 山本:「平和」に尽きると思います。私たちが一生懸命みどり を増やす活動をしている今でも、戦争はおこっていて、人のいのち も動植物も一瞬で失くなる事態が起きている…。ただそれを止められるのも人の力であると思うので、一人ひとりの力は小さいけれど、動植物も含めてこの世界全体が平和であり続けて、その笑顔が溢れるような社会を絶対に私たちが作っていくという覚悟を持ってやりきることが今を生きている人間の責任だと思います。今を生きている人間として、1つしかない地球をどう健全なより良い状態で次の世代にバトンタッチできるか。またそのための活動や思想を発信し続けるというのも、私たちのミッションのひとつなのではないかと考えています。 Photo, edit:Hinako ChibaInterview, text:Yuri Miyazaki