ストーリー

参加アーティストのインタビューや、アート・食・音楽に関する対談の様子、芸術祭のめぐり方やアート作品のご紹介など、百年後芸術祭にまつわるストーリーをお届けします。

フラム海苔ノリ通信Vol.3

内房総アートフェス

2024.04.15

フラム海苔ノリ通信Vol.3

4月14日(日)。いつものように品川駅で朝食を摂り、一服して内房線で、今日は五井駅から車で上総牛久駅へ。 藤本壮介《里山トイレ》Photo by Osamu Nakamura 岩沢兄弟《でんせつのやたい》 藤本壮介さんのトイレは男1、女5、共用1で合理的だった。沼田侑香さんの肉屋さんと和菓子屋さんの作品と岩沢兄弟の電気屋さんの《でんせつのやたい》(電設の屋台)は牛久の商店街です。早期だったので肉屋さんでコロッケとアジフライは買えず、和菓子屋さんで買った梅餅と桜餅は相変わらず旨かった。 大西康明《境の石 養老川》 大西康明さんの《境の石 養老川》は旧信用金庫内に一つひとつの石から型取りした銅の花弁が無数に空間に流れているような作品で、不思議な感覚でした。 柳建太郎《KINETIC PLAY》Photo by Osamu Nakamura 印西市の漁師でもある柳建太郎さんは人も知るガラス細工の名人ですが、商店街に工房を構えていて超絶技巧は見ものでした。壁に掛けられた時計と、時計の機械だけ剥き出しの20個ほどが、妙にガラスに合っていると感心しました。 豊福亮《牛久名画座》Photo by Osamu Nakamura 千田泰広《アナレンマ》Photo by Osamu Nakamura 豊福亮さんの《牛久名画座》も見応えがあります。千田泰広さんの《アナレンマ》の無数の意図と光の交錯は驚くべきものでした。 笹岡由梨子《Animale(アニマーレ)》 Photo by Osamu Nakamura 笹岡由梨子《Animale(アニマーレ)》 Photo by Osamu Nakamura 旧平三小学校で前回見れなかった笹岡由梨子さんの《Animale(アニマーレ)》は三体のオブジェ。それぞれに鍵盤楽器、ラッパ、太鼓が組み込まれていて、目と唇の映像が映しこまれている…と言っても何も説明にならない…けれども「教えてくれや、労働」という言葉をkeyに三体とも動物の必死で哀切のある、しかしユーモアともとれる訴えによって見る者の気楽な気分を揺さぶってくれる、お勧めの作品です。 森靖《Start up - Statue of Liberty》Photo by Osamu Nakamura ソカリ・ドグラス・カンプ《Peacetime》 森靖さんの木工房は作品が出来上がり始めていました(※会期中公開制作する作品)。ソカリ・ドグラス・カンプの鉄作品は完成して、グラウンドに展示されていましたが気持ちのよい出来でした EAT&ART TARO《SATOMI HIROBA》/塩田済シェフのホットサンド Photo by Osamu Nakamura 昼ごはんはベーコンホットサンドと、いちごミルクとパン。みんな上出来のおいしさでした。 ディン・Q・レ《絆を結ぶ》(市原湖畔美術館)Photo by 田村融市郎 市原湖畔美術館では、安田菜津紀さんの、日本に住んでいる外国人のお話です。皆さん、熱心に聞いていました。 梅田哲也《上架》Photo by Osamu Nakamura 梅田哲也《上架》 最後は木更津市です。梅田哲也さんの作品は旧市役所跡の車庫兼物置きで、ガラス球、網、バケツ、ロープや石や貝殻と現世での島の声は、飛行機の爆音が空間の中にあるのを、私たちは詩を読むように回るのですが、これが楽しい。グラウンドにはネットが絡まった立方形のポールがあって、そこから見上げる飛行機は印象的でした。 増田セバスチャン《Primal Pop》 駅のインフォメーションセンターで増田セバスチャンの仕事を見て帰りです。気持ちの良い晴日、特に旧平三小学校での桜は見事でした。 旧平三小学校の桜 北川フラム

フラム海苔ノリ通信 Vol.1

内房総アートフェス

2024.04.04

フラム海苔ノリ通信 Vol.1

アートディレクター・北川フラムが綴るコラムを定期的にお届けします。 槙原泰介「オン・ザ・コース」Photo by Osamu Nakamura -木更津市- ついさっきまで開いていたと思えるような町の本屋さん。その主人の人となりが思い浮かぶような店先を借りて、槙原泰介の干潟についての展示がある。地図や干潟についての写真や観察、干潟観察ツアーのポスター等々。木更津の干潟の一部は工場地帯に変化したけれども、したたかに残っているところもあって、作家はそこに変わらぬ関心をもっている。その混在した店内は一味も二味もあって、何気ない容器にはメダカが飼われている。合理一辺倒ではない町の店の大切さがあって嬉しい。これはこの内房総アートフェスのベースになる傑作だと思いました。豪雨のあとの雨あがり、その干潟巡りに行きたかったが、果たせなかった。残念。まだ4月13日(土)、4月28日(日)、5月11日(土)にあるのでお誘いです。この豪雨のせいで旧里見小学校(市原市)での「おにぎりのための運動会!」も中止。これも4月27日(土)と5月18日(土)にありますよ。 槙原泰介干潟ツアーの様子 EAT&ART TARO「おにぎりのための運動会!」(市原市)Photo by Osamu Nakamura 近くの倉庫に小谷元彦の「V (仮設のモニュメント5)」が不思議な迫力で鎮座しています。小谷の作品は、情報と物が溢れている現在の「神」が突如間違って登場したように感じられるものですが、それを支えている技術が見せ場になっています。 小谷元彦「V (仮設のモニュメント5)」Photo by Osamu Nakamrua -君津市- 八重原公民館は、京葉臨海工業地帯が出来始める約50年前から、多くの移住者が集まってきた団地の中にあり、今も盛んに活動しています。外に海苔が天日干しされているように見える、たくさんの瓦板が並べられていて、その鉄でできている海苔板を叩いて楽しんでいる人もいます。古い大判の写真も貼られていて、日本製鉄という世界有数の製鉄所がこの地に与えた影響を知ることができます。2万人を超える人が全国から集まってきました。深澤孝史は地域の聞き取りの上手な作家で、その時にもたらされた「マテバシイ」という植物が海苔作りに良くて、そのまま大切にされたという話を、公民館の中庭の池で見せてくれています。 佐藤悠「おはなしの森 君津」Photo by Osamu Nakamura この公民館の中央ロビーには佐藤悠が所狭しと面白い展示をしていますが、佐藤の本領は”お話しおじさん”です。人が集まれば、観衆とのやり取りを絵に描いていく、その会話の媒介は地域についての知識です。人はおのずとこの地に親しみをもっていくという仕掛けです。 さわひらき「Lost and Found」Photo by Osamu Nakamura 近くの保育園が楽しい作品になっていて、さわひらきによるものです。園庭に面して4つの教室がありますが、その教室に入っていくごとに、それぞのれの部屋が暗くなり、それぞれの物語が部屋の道具、映像、照明の動きによって語られるというもので、保育園がもっている明るい楽しさが感じられるというものです。 保良雄「種まく人」 そこから少し行ったアパート群の一つの入口からは4階に向かっての一部屋ずつを昇っていくと、人の居なくなった部屋に外部の土と植物が入り込み、成長していく仕掛けの作品に出会います。君津にある4作品からは、その年の一世紀の時間が感じられるようです。 -袖ケ浦市- ダダン・クリスタント「カクラ・クルクル・イン・チバ」 袖ケ浦の作品がある一帯は、班田収授の法があった頃からの古い土地で、田甫の広さは変わっていないような豊かな場所で、インドネシアのバリ島にある鳥よけの風を受けて鳴る楽しいダダン・クリスタントの作品「カクラ・クルクル・イン・チバ」が50基カタカタと音を立てています。近くにある販売所の果物・野菜は旨さ、値段ともに魅力的なのでお薦め。 大貫仁美「たぐり、よせる、よすが、かけら」Photo by Osamu Nakamura 資料館を巡る美しい池を囲んだ袖ケ浦公園巡りは人気がありますが、その中の2基の竪穴式住居と歴史的建造物の旧進藤家には、大貫仁美のガラスの断片を中心とした作品が設えられてあります。旧進藤家では、周辺の人たちとのワークショップでの成果もありますが金継のように繊維がガラス化したシルエットが美しい。 東弘一郎「未来井戸」 そこから降りた所にはモノづくりの名人・東弘一郎の上総掘りが見事に作られて圧倒されます。(近くにカブトムシのバイオスフェアもあります) キム・テボン「SKY EXCAVATER」Photo by Osamu Nakamura 江戸湾を囲んで房総半島には更級日記以来、古い歴史があります。鎌倉殿は房総と三崎半島の一衣帯水の世界を往来したし、里見氏の栄枯盛衰もある。江戸時代は池波正太郎の小説に出てくるような江戸前の旨い食物があったり、良くも悪くも江戸を補完する土地でもあり、幕末からは国防の拠点ともなりました。臨海工業地帯へと変化したあと、アクアラインが画期をつくります。その「アクアラインなるほど館」という名の施設にはキム・テボンが、そのシールド工法が宇宙船のコクピットのように感じられたらしく、迫力ある展示をしましたが、ここには60年代の丹下健三の「東京計画」などの計画が一瞥されていて近代日本を肌で感じられるようになっています。 -富津市- 五十嵐靖晃「網の道」(下洲漁港)Photo by Osamu Nakamura 富津は内房線特急の停まる君津駅の先にあり、富津岬を抱える太平洋の外洋と接するところ。今もって、下洲漁港には海苔漁業者がたくさん居る。五十嵐靖晃はそこに迫力ある美しい海苔網を設置しました。海苔網は水面下数cmほどに設置します。どんな海苔を採るかにより幅20cmほどのマスは異なります。採取時にはこれを水面上1m以上に持ち上げ、いわば海苔網の下を漁船がくぐり海苔を落として集めるのです。それを陸で体験するのが、この作品の楽しいミソです。もともと漁師さんは富津地区4漁協(青堀・青堀南部・新井・富津)に所属していましたが、埋立を前にして現在の場所に移住しました(もとの場所の陸にも網は設置されています)。 岩崎貴宏「カタボリズムの海」 武藤亜希子「海の森-A+M+A+M+O」Photo by Osamu Nakamura この埋立記念館は楽しい海苔採りを含めた江戸湾一帯のよくできた資料館ですが、そこの和室に岩崎貴宏が醤油の海を作り、そこに船のミニチュアを浮かべています。障子紙越しに射してくる光の変化が美しい。その向かいに武藤亜希子さんのアマモをテーマにした空間があり、遊べます。 中﨑透「沸々と 沸き立つ想い 民の庭」Photo by Osamu Nakamrua この建物の隣に富津公民館があり、この入口と二階を使って中﨑透による、”4人の住民の語りによる文物を編集した、地域の生活のリアリティ”ーー「沸々と 沸き立つ想い 民の庭」が楽しめます。地域を歩く。そこに残されている道具や看板、雑誌・資料を集める。そこに生きている生活者に丁寧にインタビューして纏める。そこに氏独特の色付きアクリル板と照明を挟んで編集するというサイトスペシフィックアートの方法を展開しています。ここでは館内のホールを出ての階段や通路も使っていて、総合的な体験が可能です。 まずは第一報。 北川フラム

「自分が生きてる間に、百年後に続く何かをしないといけない。自分がつくったものがゴミになってはいけないなと思います」

内房総アートフェス

2024.02.20

「自分が生きてる間に、百年後に続く何かをしないといけない。自分がつくったものがゴミになってはいけないなと思います」

コスチューム・アーティスト ひびのこづえ ---------ひびのさんは、en Live Art Performanceの衣装を担当されていますが、百年後芸術祭に関わることになったきっかけは? 私はコスチューム・アーティストとして、服をアートとして、ダンス・パフォーマンスをつくったり、野田秀樹さんの舞台の衣装に関わったり、NHK E テレ「にほんごであそぼ」のセット衣装をつくったりと、とにかく、人に関わるものを作り続けてきました。百年後芸術祭に関わるきっかけは、この芸術祭のクリエイティブディレクターでもある大木秀晃さんの存在がありました。東京オリンピック2020の企画の一つで「わっさい」というオンラインイベントがあったのですが、大木さんに声をかけてもらい、衣装デザイナーとして関わることになったんです。ダンサーのアオイヤマダさんや高村月さん、KUMIさんもこの時のイベントで初めてご一緒したのですが、すごくユニークなダンサーの方々でした。ふだん私はコンテンポラリーのダンサーとのお仕事が多かったのですが、その枠を飛び出した表現方法で活躍されている方々とのお仕事を通してとても感動も味わっていた中でのお誘いでしたので、お受けさせていただきました。 ---------en Live Art Performanceのコンセプトを受けてどんな衣装のイメージを考えられたのでしょうか? まず最初に芸術祭や「en」というコンセプトをお聞きして、大枠は分かるけれど、このプロジェクトをどうやってつくっていくのかを理解するのに戸惑いましたね。ポールダンサーのKUMIさんとダンサーの高村月さんが出演されるということですが、小林武史さんがイメージされているパフォーマンスの世界観がどういったものなのか、そのための衣装をどうやってつくったらいいか悩みながら、手探りで進めていった感じです。 いつもそうなのですが、かたちになっているものから引き算するのではなくて、かたちのないものに足していくので、これが本当に正解かどうかは今でもわからないけれど、でもいろんなクリエイターが小林さんを中心に集まって、いろんな謎解きをしていってできたものがこれなんだろうなという風には思います。小林さんや大木さんからいただいたストーリーや言葉の一端を衣装に置き換えるということをしていきました。 ---------KUMIさんも高村月さんの衣装もとても印象的で、惹き込まれるものがありました。 実際に制作した衣装は3種類です。高村月さんの最初のお面をつけた衣装と最後の衣装、KUMIさんが曼荼羅の中心にいる人のようなイメージの衣装です。ポールダンスって、衣装を身に付けていない方が楽じゃないですか。そういう意味で、衣装があることでKUMIさんの技を封印してしまって申し訳ないなという気持ちもありつつ、ただ、あの3メートルの棒の上に重力を超えて軽やかに踊るKUMIさんの姿がとても神々しいんですね。その神々しさを表現したいという思いがあったのと、重力に抗って動くKUMIさんに対して浮遊するバルーンをつけるという、相反しているのだけれど、引いてみると一つのフォルムにまとまって見える。時空を超える存在に見えると思ったので、今回はKUMIさんに頑張ってもらいました。 月さんに関しては、映像とのシンクロしたメッセージがあったので、それをどう形にすればいいのかを考えました。舞台が全部明るいわけじゃない空間で、闇の中を彷徨うような、そういうイメージが映像の中にもありましたけど、闇に溶けずに、光を味方にできるような衣装にしなくちゃいけないなというイメージでつくりました。後半の衣装はとにかく、月さんが動いてくれることで衣装が「円」になるというものをつくりたかった。だから円になるために月さんはずっと踊り続けなくてはいけないんですよ。でも、それが「en」っていうことなんじゃないかなと。円や縁をキープすることって相当な努力が必要なんだなって、月さんの踊りを見ていて、改めて感じました。衣装って、着る人に負荷をかけてしまうから、どんな仕事でも「ごめんなさいね」ってつい言ってしまうのですが、それでもみんなが目指すところに向かってくれる表現者たちのパワーに敬服します。 ひびのさんによる衣装デッサン ---------初公演を終えての感想は? 観客の方はそこまで感じないかもしれないのですが、一時間ほどのステージの中で、KUMIさんと月さんのお二人が衣装を着て踊る姿を見ながら、絡まずに踊れるかなとか、私はライブパフォーマンスを見守っている時が一番ドキドキするんです。でもそれが生身の人間が動くこと、演じることの危うさであり、生で魅せることの面白さでもあるなと思うんです。 ---------長年、衣装デザイナーとして経験を重ねていらっしゃるので、生身の人間を舞台の上で引き立たせるという事はお手のものかと思うのですが、そんなひびのさんでも難しさを感じることはあるのでしょうか? もちろんありますよ。こうした方がよかったかなとか、もし巻き戻せるならここ気をつけようとか。そういう意味では、一度限りではないこのen Live Art Performanceは回を経て進化していくのかもしれません。やっぱり、人ってモノではないから、その時々で感覚も体調も変わりますし、初演を開催した市原とKURKKU FIELDSでは場所の雰囲気が全然違いますから、みんなにとって毎回新しい発見があることは大きいと思います。できれば全国各地で何度も公演を重ねていけたらいいなと思っています。 ---------百年後と聞いてイメージするものはありますか? 「あ、自分はいないな」と、最初に思いますよね(笑)。でも、100年後に責任をきちんと持たないといけないんだなっていうのを、改めて自分にも言われているという感覚を持ちましたね。自分が生きてる間に、百年後に続く何かをしないといけないと感じます。デザインやファッションの世界の百年後でいうと、自分がつくったものがゴミになってはいけないなとは思います。みんながそれぞれつくったものを一回限りで捨てないこと、いいものだったら残っていくので、そういうものを生み出すことがもっと大事になっていくと思います。それは高度経済成長時代で日本人が忘れてしまったものでもあると思っていて、新しいものを生み出すことに必死になって、少しずついいものを生み出すということから離れてしまっていたような気がします。 ---------ひびのさんは日々どんなことから創作のインスピレーションを得ているのでしょうか? やはり、自然からのインスピレーションが大きいですね。自分が子どもの頃育った場所の空の色や緑など、日本の自然環境の影響が大きいと思います。初めてパリに行ったときに、なぜフランス人の描く空の色が違うのだろうとずっと思っていたことがはっきりしたことがあったんですね。本当に空の色が違ったんです。ほかにも、歌舞伎の衣装を手がけた時に、しっくりくるなという感覚を持ったことも大きくて、派手な色ではなく、日本の伝統文化に残っている、日本の環境にある色を自然に使っていたんだなということを確認できたんです。日本人であるということ、日本らしさというものが創作の原点になっていると思います。 ---------最後に、百年後芸術祭に関心を寄せてくださっている方へのメッセージや期待などがあればお願いします。 衣装の中にいるダンサーたちの身体とか、気持ちとか、感覚など、そこまでみんなが感じ取ってもらえたらいいなと思います。個人的には本当はもっと長く踊ってほしい(笑)。そうしたらもっと伝わるんだろうなと思っています。百年後芸術祭に関しての期待は、とにかく続けること。百年後まで続けないと、答えは見つからないと思います。 Interview & text:Kana Yokota 

百年先の未来を想いながら、食をみんなで分かち合うことの喜びに触れる。「百宴〜Prologue〜」レポート。

木更津市

2023.12.25

百年先の未来を想いながら、食をみんなで分かち合うことの喜びに触れる。「百宴〜Prologue〜」レポート。

11月5日(日)に開催された「百年後芸術祭 EN NICHI BA Special  百宴〜Prologue〜」。このイベントは、KURKKU FIELDSのレストラン「perus(ペルース)」の山名シェフが、この土地で採れた恵みを「分かち合う」ことを通して、参加者と共に未来に思いを馳せる時間を形作りたいという想いから企画されました。 “生きることは食べること。「食」は私たちの身近な楽しみであり、喜び。しかし気候変動が進み、日常が確実に変化している今、私たちがどのような食材を選択し、食べ、生きていくのか。今まで通りの暮らしで100年先の豊かな未来を創造できるのか。一度立ち止まり、想像してみる時間が必要かもしれません。「食べる」という行為が自然環境を破壊するのではなく、今よりも豊かな自然環境を育むことに繋がればー。” そんな山名シェフの想いが込められた百宴に参加したのは30名。友人同士や家族での参加など、年代もさまざまな人同士が集まりました。 案内人を務めるのはKURKKU FIELDSのスタッフの佐藤剛さん。 「百宴という名前の由来は、100人以上のたくさんの方々とこの時間を共にできたらという想いがあるのですが、初回はそこまでの規模ではなくこの30名のみなさんで、100年後を考えながら過ごせたらと思っています。100年後を考えるということは、誰かのことを考えるということでもあると思います」。 続いて、企画者である山名新貴シェフからの挨拶です。 「僕はふだん、cocoonのperusという宿泊者限定のレストランでシェフをしていますが、今日は外に出て、木更津の風土を感じていただきながらおいしい食事をみなさんで分かち合うことができたらと思っています。100年後に向けて、一人一人、残したいものや感じることは違うと思いますが、思いは違えど、今回は『分かち合う』というテーマのもとお肉や魚といったお料理、そして環境、ここで過ごす時間、感じることを分かち合いたいと思っています」 まずは、火を燃やすための枝や枯れ葉を集めることからスタートです。意外と燃えやすそうな枝を探すのは簡単ではないことを感じつつ、参加者の方々とワイワイ探し歩きます。そして、使わなくなった麻紐をほぐしたものと一緒に火に投げ込みます。 ライターで一瞬にして火をつけることはできるけれど、こうしてみんなで枝を集め、麻紐をほぐす作業を経ての点火は感慨深いものがあります。こんな風に自分で火を起こす体験は初めてだという人も数名いました。 そして次にKURKKU FIELDSの場内を探索しながらファームツアーに出かけます。 オーガニックファームで育っているオクラやパプリカ、マイクロキュウリなど、その場で齧りながら収穫します。みずみずしくて甘酸っぱいマイクロキュウリの美味しさにみんな感激しながら、先を進みます。ビニールハウスでは菜の花やかぶ、ラディッシュ、いんげんなどを収穫します。 エディブルガーデンにはたくさんの種類のハーブが育っています。レモングラス、ローズマリー、ミントなどフレッシュな香りを楽しみながら散策。エゴマの葉っぱを食べてみると、シャキッとしたフレッシュさと濃厚な味わいに驚きます。 水牛にもご対面! 日本では数えるほどしか飼育されていない水牛ですが、KURKKU FIELDSではなんと約30頭も飼育しています。この水牛のミルクで作られたモッツァレッラチーズはKURKKU FIELDSのシグネチャー的な商品でもあり、本場イタリアで研鑽を積んだチーズ職人・竹島英俊さんによってつくられています。 1時間程度のファームツアーを終えて、会場に戻ります。 ウェディングパーティーかのようにスタイリッシュにコーディネートされたロングテーブル。一人一人セッティングされたお品書きには、手書きで「分かち合う」と書かれていました。 ・風土〜Cooking in the Earth・生命力・薪火・山海の循環・矛盾の中で といった素敵な言葉もありました。(あとでメニュー名だったことに気づきます) 最初にいただいたのはウェルカムドリンク。お米を入れた木の器にはグレープフルーツをくり抜いてできたカップが。蓋を開けると、グレープフルーツの果実と米麹、ミルト、ハチミツを漬け込んだというドリンクでした。 「ミルトはイタリアのサルデーニャ島名産のハーブで、現地では葉を月桂樹の葉の感覚で料理の香りづけにしたり、実をリキュールに漬け込んだりするんですよ。和名は銀梅花(ギンバイカ)と言います」とは、perusでドリンクを担当している小高光さん。 みんなで乾杯!!甘酸っぱく、奥深い味わいでありながら香りでも楽しませてくれる不思議な感覚のドリンクでした。 みんなで収穫した採れたての野菜を蒸し焼きにしてくれたもの、具材たっぷりの農場のミネストローネ、グリル野菜の盛り合わせが食卓に並びます。「ちょっと小さいかな?」「このハーブはじめてみた!」なんて会話をしながら自分たちで収穫した野菜やハーブが目の前に調理されて供されるので、会話も弾みます。「これ食べますか?」「これ美味しいですよ!」そんな声がけもロングテーブルでの食事ならでは。 今回初めてKURKKU FIELDSにお目見えしたこちらの焼き場は、宿泊施設「TINY HOUSE VILLAGE」などを手がけた竹内友一さんによるもの。黒い鉄でできたスタイリッシュなこの焼き場は100人での宴もカバーできると言います。 千葉県鋸南町勝山の海でとれた真鯛の吊し焼き。ハーブと薪火キノコで香り付けされたポルチーニクリームソースといただきます。 薪火でじっくり焼いた猪肉のタリアータはKURKKU FIELDSのある木更津市矢那で生産された矢那栗のラム酒シロップ漬けとキャラメリゼした柿とともにいただきます。全粒粉のパンもさっくさくであとをひく美味しさ。 テーブルの上の食事がすっかりなくなるまで、心地よい風と会話を楽しみながら過ごしました。そろそろ宴の終わりです。 こんなにもたくさんの人と、一つのテーブルを囲んで食事をする体験はそんなにないので最初はドキドキしたのですが、みんなで共同作業をした後だったこともあり、楽しく話が弾んだことも印象的でした。大きな鍋でどっさりつくったスープや大きな塊の肉をみんなで分け合うという楽しさも、日常生活ではほとんど経験しないので、こんなにもあたたかい気持ちになるんだということも大きな気づきでした。美味しい食事が真ん中にあればみんな笑顔になる、ということも改めて実感。 そして、食事の後、竹など自然素材で作られた器は最後にキャンプファイヤーをして自然に還したり、料理で使った植物の種を未来へ向けて撒いたり、「循環」という言葉の意味をより実感できる体験も心に残りました。 百年後、私たちは生きてはいないけれど、今私たちが行動することの一つ一つが確実に未来に何かしら影響を与えるのだということを感じた一日。良くも悪くも。自然の営みの循環の中で私たちは生かされてきたのだから、自然が喜ぶことを私たちも返していかないといけない。そんな意識も高まりました。 <<参加された方のコメントもいただきました!>> 「千葉に住んでいるのですが、KURRKU FIELDSに来たのは初めてでした。こんなにも素晴らしい場所で、素晴らしい取り組みをされていることを知って驚きました。野菜も猪のお肉も美味しかったですし、参加して本当によかったです」 「Instagramでこのイベントを知って、私が理想とする世界観のイメージとぴったりだ! と思って参加しました。分かち合う、というテーマが素敵だったし、初めましてのみなさんと楽しく野菜を収穫したり、お食事をしたり、日々の生活でもこんな時間を過ごしたいなと思いました」 「保育士の仕事をしているのですが、子どもたちにも同じ体験をさせてあげたいなと感じました。自然の循環の仕組みもあらためて勉強したいです」 「また来たい!!」 最後に、山名シェフからはこんなコメントをいただきました。 「今日は、思い描いていたイメージ通りの時間をみなさんと共有できたと思います。食べるということはその前にも後にも大切なことがあります。料理人としてもそれは昔から感じていたことだったのですが、KURKKU FIELDSで働き始めてその思いがより深まりました。身体を動かして、自分たちで火をおこし、収穫するという体験が、参加者の方々により食べるという体験の奥深さを味わってもらえるものになっていたら嬉しいです。そもそも、今回このイベントをやろうと思ったきっかけは、コロナ禍でみんなが距離を置いて過ごさないといけなくなって、壁ができてしまったことでした。やっぱり人類って昔からお互いが協力しあって、分かち合って文明を築き上げてきたと思うので、そのことの大切さにたくさんの人が気づいたと思うんですよね。僕もその一人なのですが、分かち合うということを体験するのに食はわかりやすいと思うんです。身体にダイレクトに入ってきますからね。以前からなんとなくあった構想が、百年後芸術祭のテーマと合致して、今回開催できたことを嬉しく思っています。序章を経て、また来年春に向けてすでに準備を進めています。参加していただける人数を少しずつ増やしていって、いつか本当の百宴ができるように、僕らも体制を整えていきたいと思っています」 春の「百宴」もお楽しみに!! Text:Kana Yokota

「百年後、私もあなたもいない世界。そこに何を思うか」。11月5日(日)開催「en Live Art Performance」木更津公演レポート

木更津市

2023.12.08

「百年後、私もあなたもいない世界。そこに何を思うか」。11月5日(日)開催「en Live Art Performance」木更津公演レポート

「百年後芸術祭-内房総アートフェス-」のオープニングイベントとして、千葉県市原市の上総更級公園にて初披露された「en Live Art Performance」が木更津のオーガニックファームKURKKU FIELDS で本公演として開催されました。 秋晴れの日曜日、開場の10時から来場者は徐々に増え、「en Live Art Performance」には約900人の方が来場されました。当日は、地域の食の魅力が集うマーケットイベント「EN NICHI BA」も同時開催。内房総5市の魅力的な食材を使った「SUN ファーム」や、「nana」、「1分おむすび」、など計26店が出店。 また、今回は、KURKKU FIELDSのレストラン「perus(ペルース)」の山名新貴シェフが、この土地で採れた恵みを「分かち合う」ことを通して、参加者と共に未来に思いを馳せるべく、ワークショップ型の食体験ができる「百宴~Prologue~」も同時に開催しました。 そして、夕方17時。空がオレンジとピンク色に染まり、肌寒くなってきた頃、KURKKU FIELDSのクリエイティブパークに設営された造形的な舞台にプロデューサーの小林武史さんが登場。 開催に際して小林さんは、 「過去からの縁、未来からくる縁を繋ぎ、これから百年後に向かって積み上げていこうという思い。わかりやすく“未来はこうだよ”ということではなく、観念的、抽象的な要素も含まれているかもしれないけれど、皆さんが思うこと、想像することでしか未来はないと思います。難解な部分もあるかもしれませんが楽しんでもらえるものとなっておりますので、ぜひ楽しんでいってください」 と観客に語り、ライブが幕を開けました。 「en Live Art Performance」は、小林武史総合プロデューサーが率いるクリエイター集団「Butterfly Studio」 による、音楽・映像・ダンス・光・テクノロジー(ドローン)を融合させたライブアートパフォーマンス。 本公演は、小林武史さんのピアノの演奏から始まりました。 King Gnuや大橋トリオなど様々なアーティストのMV出演や振付を担当しながら俳優としても活躍しているダンサーの高村月さんによるダンスパフォーマンスは、観客席まで降りるなど、縦横無尽に舞台を使い、音楽に合わせてエモーショナルな表現で観客を「en Live Art Performance」の世界に引き込みます。 続いて、KUMIさんによるポールダンスパフォーマンスは、光に照らされて、妖艶さと力強さが夜空と相まって神秘的な空気に包まれました。 高村月さんとKUMIさんの華やかな衣装デザインを手がけているのはコスチューム・アーティストのひびのこづえさん。「en=円」をイメージしたデザインの衣装はダンサーの二人が舞台を踊り回るたびに衣装の裾が円状にふわりと広がって目を奪われます。 そして、背後に流れる映像は映像作家の柿本ケンサクさんによるもの。自然災害、戦争、破壊、抗えない自然の脅威と人間の愚かな行為をイメージする世界中の映像が流れます。 そして、木々などの自然や畑に囲まれたKURKKU FIELDSの夜空に約500台のドローンが姿を現しました。 会場の後ろの方で静かに見守っていた子どもたちが、ドローンが現れた瞬間に歓喜の声を上げていました。映像は、人の生と死を感じさせるものから次第に生きる喜び、地球とともに生きることへの希望を呼び起こすものへと変わっていきます。 夜空に美しく光り輝くドローンを見上げながら、100年後はどんな世界になっているだろうと思いを馳せてみます。もちろん私自身はそこにはいないし、大きく何かを変えることはできない。ただ、この日、夜空に輝く光を笑顔で見つめていた子どもたちが、生きていく希望を失わない未来を、世の中を、つくっていくために今できることがあるかもしれない。 そんなことを思いながら、「en Live Art Performance」は静かに幕を閉じました。 百年後芸術祭らしい、自然とテクノロジーが入り組んだ臨場感あふれるこのステージ、次回は春の開催を予定しています。 Text:Kana Yokota

わきまえて、生きるー。「Kanji Kobayashi Presents Special Dining for 円都LIVE」レポート

木更津市

2023.11.08

わきまえて、生きるー。「Kanji Kobayashi Presents Special Dining for 円都LIVE」レポート

「百年後芸術祭」初となる「EN NICHI BA」が清々しい秋晴れの中開催 10月21日(土)、清々しい秋晴れで、日中は上着がいらないくらいの陽気のなか、未来の食を考え、体感するイベント「EN NICHI BA(エンニチバ)」がKURKKU FIELDSで開催されました。 当日は11時オープン。千葉で活躍されている農家さんや、レストラン、食品加工メーカーさんなど、15店舗の屋台がシャルキュトリー前の広場に並びました。ジャムやヴィーガンフード、ハチミツなど、美味しそうな商品を試食したり、はまぐりやおむすびを食べたり、夕方の「円都LIVE」を楽しみに来ているお客さんがテラス席や芝生の上でゆっくりとランチを楽しむ様子が見られました。 午後1時半、Special Diningの参加者はインフォメーションで受付開始。胸が高鳴ります。20名近くの参加者を前に、まずは「EN NICHI BA」のクリエイティブに関わるライフスタイリストの大田由香梨さんからご挨拶。  今回のこのイベントは、「百年後芸術祭」の一環として開催されたもので、「EN NICHI BA」とは、「縁日(ENNICHI)」、「市場(ICHIBA)」、「千葉(CHIBA)」 が融合した食と学びの新たな食体験の場なのだと教えてくれました。 「千葉県は山の幸、海の幸に恵まれた、豊かに受け継ぎ守られてきた食文化があります。この豊かな食文化を百年後にも伝えていきたい、そんな想いを込めて開催しました。今日は和歌山の『villa aida』のシェフ小林寛司さんによるお食事と円都LIVEをみなさんに楽しんでいただきますが、お食事の前に少しファームツアーにご案内したいと思います。このファームツアーに参加していただくにあたり、日常の感覚から少し離れていただきたいと思っています。私たちは日々、食べたいもの、欲しいものがスーパーですぐに手に入る環境で生きていて、パスタが食べたい、ハンバーグが食べたいとお料理から先に考えているかと思いますが、KURKKU FIELDSはそうではなく、今、畑で収穫できる旬な野菜、ここで育った鶏や猪、水牛のミルクでできたチーズなど、今ここにあるもの、風土にあったものからその日食べるものを発想します。それを私たちがどう身体に取り込むか、そんなことを思い、感じながら、ファームツアーを体験し、お食事を楽しんでいただけたらと思っています」(大田) そして、KURKKU FIELDSの農場長である伊藤雅史さんと循環の仕組みづくりを担当している吉田和哉さんにバトンタッチ。 「気持ちのいい秋晴れの日にようこそ!積極的に畑に入って、土を踏んで、匂いを嗅いでみてください」 通常、一般の来園者は入ることのできないオーガニックファームエリアを進んでいきます。10月、千葉県では収穫できる野菜が限られているそうですが、そんななかでも今年は暑さが続いたため、オクラやトマトなどの夏野菜がまだ収穫できるのだそう。可愛いマイクロきゅうりも発見しました! 夜になると猪が土の中の虫や微生物、どんぐりや栗などの食べ物を求めて入ってくるため、畑の電気柵は欠かせないと言います。ただ、今年の猛暑のせいでどんぐりが大きく育たず猪の食べ物が少なくなってしまったことが原因だと聞いて、可哀想な気持ちにもなります。野生の動物たちは、気候によっては日々食べるものの確保が困難になってしまうのです。 「実は先週の大風でとうもろこしが倒れてしまったんです。その時はアライグマが落ちたとうもろこしを食べてましたね。あとはオクラ、インゲン、トマト、マイクロキュウリ、カボチャなどが見つかるかと思います」。 広大な畑をゆっくりと歩きながら、次に向かったのは鶏舎。KURKKU FIELDSでは鶏たちを地面に放して飼育し、そこに隣接した運動場をつくることで鶏たちが自由に走り回れる環境を整えているといいます。本当に伸び伸びしていて居心地良さそう! 「美味しい餌と美味しい水、広々とした運動場など、鶏にストレスのない環境を作ってあげて、健康を維持できるように育てています。その代わりどうしても一個あたりのたまごの価格は高くなってしまうのですが、ここではいつも私たちが食べているたまごは鶏が産んでいて、その鶏はどんな環境で育っているのかを知ったり、想像してもらったり、そんなきっかけになればと思います」。 「すべてのものに神が宿る」。日本人固有のアニミズムを五感のすべてで感じる6皿のアート たった30分ほどのファームツアーでしたが、畑の中を歩くことに慣れていないせいか、じわりと汗をかくほど。午後2時、お腹も程よく空いてきて、Special Diningの会場である「フラック棟」に近づくと、炭火の香りが漂ってきました。 大きなお肉は千葉県の猪。これからみんなでいただくために、じっくりと時間をかけて火入れをしてくださっているのはKURKKU FIELDSの佐藤剛さん。 「今日は千葉の食材と、KURKKU FIELDSで育った食材でお料理を作りましたので、ぜひ楽しんでください」とは『villa aida』のシェフ小林寛司さん。 金木犀の香りのする梅ジュースをウェルカムドリンクにいただきながら、ゲストの名前が呼ばれるまでの少しの時間を秋風とともに楽しみます。 そして、通されたお部屋は、白を基調としたテーブルセッティングが見事なパーティー会場。オリーブや丸太のトレーなど、グリーンとウッディなアクセントがとても洗練されていて、ライフスタイリストとして活躍されている大田さんのセンスが光ります。 こちらのフラック棟も一般には開放されていない場所。草間彌生さんやアニッシュ・カプーアなどアート好きにはたまらない人気作家の作品が飾られていて、まさにスペシャルな空間です。 一人一人、自分の名前が書かれた席に着席し、いよいよSpecial Diningスタート。コース名は「ANIMISM」と書かれています。 「ファームツアーでは、まさに今の“実り”を見ていただけたのではないかと思います。そして、ここ最近は気候変動もあり、地球が私たちに強いメッセージをくれていると思うのですが、畑の中でもそういった自然との会話ができたのではないでしょうか。今回のお料理のコース名は『ANIMISM』です。アニミズムとは、自然界には霊魂のような存在があるとする、自然信仰を意味する言葉です。日本人は縄文時代の頃から、風、雷、雨、木、石、大地など自然界のすべてのものに神が宿っていると信じていた民族です。海外に行って日本に帰ってくると特に感じるのですが、アニミズムという信仰心こそが、食の多様性や可能性を豊かにしていると思うんです。特に千葉は海に囲まれていて、農作物も海産物もとても豊かです。100年前、それ以上前の方々が種を植え、自然を繋いできてくれたからこそ今目の前にある食材をいただくことができる。そんな感謝の心でお料理を楽しんでいただけたらと思います」 最初にいただいたのは、摘果したグレープフルーツをくり抜いた中に、ケールと猪や鹿の骨や肉からとったコンソメとケールを和えたスープ。清々しいグリーンとマイクロキュウリの花がまず目を楽しませてくれて、中のあたたかいスープで緊張を解きほぐしてくれる。そんなホッとする一品です。 <広く深く> 次は、ジャガイモと自然薯に玉ねぎと白ワインのフォームを和えたもの。甘いじゃがいものピュレと、粘りのあるなめらかな食感の自然薯とふんわりとしたフォームが口の中で混じり合い、広く深く、というメニュー名通り、土の中で育まれてきた大地の広さや力強さを感じます。やさしい。。 <明瞭、歴然> そして次は、バターナッツのスープです。大きめのお皿にたっぷり。甘さとコクのあるバターナッツですが、bocciのピーナッツペーストのムースと塩ゆでのおおまさりとともに絡めながらいただいていると、あっというまにお皿の底が見えてしまいました。千葉といえば落花生ですが、こうしてムースにしていただくとまた違った楽しみ方ができるという発見も。バターナッツとの相性も抜群です。美味しい野菜って、スープにしてたっぷりいただくのが一番満たされるし、贅沢なのではないかと思わせてくれました。 <身近な自然で食を整え> 4皿目は、麦のリゾットと色とりどりの温野菜。まさにさっきファームツアーで出会ったマイクロキュウリやオクラの登場です。カブや大根もちらり。シャキシャキとした歯ごたえと野菜そのものの甘みを楽しみながら、下に隠れた麦のリゾットとともにいただきます。身近な自然、まさにKURKKU FIELDSの恵みがたっぷりつまった一品。何度も何度も食感と野菜同士のハーモニーを味わえる、パーティーのように楽しい一皿でした。 <風土と共に> あたたかいメニューが続き、すでに身も心もほぐれてほどよく満たされてきた頃、5皿目の登場です。外で炭火で焼いてくださっていた千葉県の猪肉と蓮根のラビオリ、そして焼き大根がお皿の上でアーティスティックに盛り付けられています。弾力のある食べ応えのある猪はコクのある赤ワインソースと好相性。シャキシャキとした蓮根の歯ごたえともっちり食感がやみつきになるラビオリ、香ばしい大根。添えられたオリーブのサブレや、シナモンリーフの香り、ローズマリーといったハーブの心地よい香りを楽しみながらいただく一皿は、自然に抗うことなく、力強く、ていねいに生きること、大地に感謝しながら生きることを教えてくれる、素晴らしいお料理でした。 <わきまえて生きる> そして、最後の6皿目はいちじくと椎茸を使ったデザート。いちじくの葉のミルクアイスとイチジク煮、そしてKURKKU FIELDSのチーズ職人 竹島さんのチーズ、生椎茸をスライスしたものを一緒にいただきます。いちじくの葉っぱをミルクに漬け込み香り付けしたアイスはさっぱりしつつもいちじくの香りがふわりと広がる上品な味わい。いちじく煮は千葉県香取郡にある酒蔵「寺田本家」さんの少し甘味のあるお酒に浸けた後、オーブンでキャラメル状に焼き上げたもの。ほんのりと秋の香りを運んでくれる生椎茸といちじくの新鮮なマリアージュに感動を覚えた一皿でした。そこにある旬のものを、美味しくいただくこと。私たちは自然の一部であり、自然に生かされていることをわきまえる。そんなメッセージなのかな、なんて想像しながら至福の時間を味わいました。 食事の後半には、円都LIVEに出演予定のチェリスト、四家卯大さんが演奏をしてくださるというサプライズも。バッハ 無伴奏チェロ組曲 第1番「プレリュード」にはじまり、パブロ・カザルス「鳥の歌」、サン・サーンス「白鳥」などチェロの名曲を奏でてくれました。「チェロにも神様が宿っていると思う」。そんなお話を四家さんがしてくれたことで、供される食事、サービス、この空間のすべてにも神様の存在を感じて、崇高なひと時となりました。 シェフのパートナーであるソムリエの小林有已さんによるワインのペアリングも料理や素材の美味しさを引き立てる素晴らしいセレクトで、気づけば5〜6杯飲んでいました。 「私は料理を作ることが好きなんですけど、いつも辛味とか香りにこだわってしまって。今日のシェフのお料理は素材のおいしさを前面に感じられるもので、すごく感動しました」 そんな参加者の感想を最後に、神がかった夢のような時間は幕を閉じました。 「大人数で食べる料理をつくるのが得意ではないので、予定より人数を絞って開催して良かったなと感じています。KURKKU FIELDSには何度も来ているので、食材もスタッフのみんなも知っているしやりやすかったですね。今回は百年後芸術祭の一環としたイベントということで、メニューの一皿一皿に僕なりのメッセージを込めてみました。アートや映画と一緒で観た人に委ねる感覚で、食べてくださるみなさんに委ねました」とは小林寛司さん。 「百年後芸術祭初のEN NICHI BA、スペシャルダイニングイベントを無事開催することができました。寛司さんとご一緒してこの場をつくり上げる中で、“わきまえて生きる”というメッセージが自分の中で大きく響きました。通常であれば写真映えなど、刺激的な空間を求められることが多いのですが、今日は時間的にも食事が終わるのが夕暮れなので、夕陽が射した後にだんだん暗くなるように、心が落ち着く、整う、そんな環境づくりに徹しました」と大田由香梨さん。 外に出ると、ピンクとオレンジ、そして水色のグラデーションが空とKURKKU FIELDSの大地を彩っていて、心が洗われるような感動的な景色が広がっていました。「今日は日常の感覚から離れてみてほしい」。最初に大田さんが話されていましたが、この感覚を日常にしたい。自然とともに生きていることを毎日感じて生きていきたい。心からそう思える素晴らしい時間でした。感謝。 Photograper : Takahiro Kihara  Text:Kana Yokota

光輝く夜空の下、KURKKU FIELDSで開催された一夜限りの特別ライブ『円都LIVE(エントライブ)』レポート

木更津市

2023.11.08

光輝く夜空の下、KURKKU FIELDSで開催された一夜限りの特別ライブ『円都LIVE(エントライブ)』レポート

澄んだ空に冷たい風が心地よい秋の日。空が見事な夕焼けに染まった後に訪れるどこか夢見心地な日暮れのなか、圧巻の歌声が千葉県木更津市にあるオーガニックファームKURKKU FIELDSに響き渡った。 絞り出すようなハスキーボイス。ステージの上には、現在公開中の映画『キリエのうた』より登場したキリエ(vo.アイナ•ジ•エンド)が圧倒的な存在感を放っていた。 この「円都LIVE」は、「百年後芸術祭‐内房総アートフェス‐」の一環として開催。岩井俊二監督と音楽プロデューサー小林武史による、『スワロウテイル』『リリイ・シュシュのすべて』『キリエのうた』の音楽映画3作で生まれた楽曲が演奏される一夜限りのスペシャルライブだ。それぞれの作中に登場する歌姫、Chara演じるグリコ、Salyu演じるリリイ・シュシュ、アイナ•ジ•エンド演じるキリエ3人の歌声に、約2,500人が集まり酔いしれた。 バンドメンバーは⼩林武史を筆頭に、名越由貴夫、椎野恭⼀、キタダ マキ、四家卯⼤、カマタミズキがYEN TOWN BANDのコーラスに参加。映画『スワロウテイル』の架空都市「円都」の美術演出を務めた種⽥陽平が、本ライブの舞台美術に関わっているというのもファンにはたまらない内容だ。 また、「百年後芸術祭‐内房総アートフェス‐」のメインイベントでもある「en Live Art Performance」と称した、音楽・映像・ダンス・光・テクノロジー(ドローン)を融合させたライブアートパフォーマンスで、これまでにない新たなライブを演出している。 オープニングを飾ったキリエ(vo.アイナ•ジ•エンド)は、映画の挿入歌である「ひとりが好き」「名前のない街」「ずるいよな」などを歌唱。「幻影」ではエモーショナルなダンスも交えたパフォーマンスを披露し観客を魅了した。 続いて、すっかり暗くなったステージに登場したのは、リリイ・シュシュ(vo.Salyu)。透き通る伸びやかな声で「飽和」「エロティック」「飛べない翼」「エーテル」、ラストに「グライド」を歌い、リリイ・シュシュ特有の世界観を表現した。 そして、YEN TOWN BANDのグリコ(vo.Chara)がステージに降臨。ローズピンクのドレスに淡いピンクのファーコートを羽織った佇まいと唯一無二な歌声はまさにグリコで、公開から27年たった今でも色褪せることなく私たちの前に現れた感動からか、会場はさらに熱を帯びる。 盛り上がりを見せるなか、「Sunday Park」「Mama’s alright」「上海ベイベ」などを歌唱。ステージの上から「岩井俊二いる〜!?」と言葉を投げかけたり、隣でピアノ演奏する小林武史に「なんか話してよ」と話をふったり、楽曲中にステージを降りたり、自由奔放な振る舞いで会場を沸かせた後、「She don’t care」のアウトロでキリエが再び登場しバトンタッチ。YEN TOWN BANDの音楽に合わせてキリエがダンスを披露した。 キリエの象徴でもあるカラー、ブルーのカーディガンを羽織ったキリエはそのまま楽曲「ヒカリに」に突入。暗闇に映えるブルーが彼女の透明感を引き立たせるなか、映画主題歌「キリエ・憐みの讃歌」を堂々と歌い上げた。 その最中、キリエが手を振り上げると、真っ黒な夜空に光り輝く無数のドローンが登場。満点の星空のような演出に、観客が一斉に空を仰ぐ。 いよいよクライマックス。「円都LIVE」のラストを飾るのはYEN TOWN BAND。「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」のメロディが会場に響き渡ると、歓声が湧き上がった。 バックハグで聞きいっている恋人たち、パパの肩車やママの抱っこでステージを夢中で覗く子供たち、微笑みあって音に身体を揺らす友人同士。ドローンの星空のもと、音を味わい、空間に酔いしれ、老若男女それぞれの心を震わせた「円都LIVE」。時を超えて今なお輝きを失わない音楽に奇跡を見た夜は、そうして幕をおろした。 小林武史 コメント「スワロウテイル」「リリイ・シュシュのすべて」「キリエのうた」、3作品の時間軸が離れている映画が一つに繋がった奇跡的な夜になりました。最高でした。 Chara コメント以前KURKKU FIELDSで(ライブを)やった時はコロナ禍ということもあり、規制があって声が出せなかったりと限られていましたが、今日は(規制がなく) 「アイナかわいい!」とか言えるし、それぞれの演出があってよかったです。Salyu コメント高校時代の憧れのヴォーカリストCharaさん、そして子供の頃に見た素晴らしい映画の独創的な世界観を作ったチームの最新作で本当に素晴らしいキリエちゃんを演じたアイナ・ジ・エンドさんを見て(「リリイ・シュシュのすべて」に参加していた)当時を思い出しました。長い時間軸の中に私もいさせていただいていることすごく光栄でした。アイナ・ジ・エンド コメント(ステージを終えてみて)死ぬ前の夢かな、実感がないです。ありがたいとしか言いようがないです。Charaさんの後にステージに出るのは足がガクガクで「帰りたい!」って一瞬なりました(笑)。小林さん、岩井さんをはじめすべての人に愛を教えてもらいました。岩井俊二 コメントこんな時がやってくるのかとなんか感無量としか言いようがないです。地道に頑張っていたら、こんなご褒美をもらえる日が来るんだなと思いました。 <観客コメント> 「多感な10代の頃に聞いて衝撃を受けた「あいのうた」。母となってから、愛の歌はすべて子どもに対しての思いに変換されていたのですが、スワロウテイルの「あいのうた」は、恋をしていた自分に戻る、本来の自分に戻る特別な歌だと、今回改めて思いました」(40代女性) 「映画『キリエのうた』を観て、楽しみに参加しました。岩井さんの映画はほとんど観ているのですが、どの作品も人間の光と影の両面を描かれていて、自分自身の青春時代と重なり合うようなシーンと小林武史さんの音楽が絶妙で大ファンです。そんな岩井さんの作品世界が夢のような舞台として実現するなんて本当に感動です!」(30代女性) 「自分の人生にこんなに素敵な瞬間が訪れるなんて、夢でも見ていたんじゃないか?と思うようなライブでした!ドローンの演出も素晴らしかったし、百年後芸術祭にふさわしいアーティスティックな一夜だったと思います」(40代女性) Photo by 岩澤高雄  Text:Mina Yoshioka

「百年後芸術祭」を通して各自治体の様々な取り組みが”オーガニック”につながるとともに、持続可能な地域づくりへのチャレンジを実現したい。

木更津市

2023.11.07

「百年後芸術祭」を通して各自治体の様々な取り組みが”オーガニック”につながるとともに、持続可能な地域づくりへのチャレンジを実現したい。

木更津市長 渡辺芳邦 ---------「百年後芸術祭-内房総アートフェス-」開催の経緯をお聞かせください。 もともとは小林武史さんと市原市と千葉県の三者で話を進められていましたが、千葉県誕生150周年を記念した催しにしたいということで近隣市も一緒に開催できないかとお話をいただきました。そこで君津市、袖ケ浦市、富津市ともコミュニケーションを取り、5市で開催すればたくさんの方に内房総を見ていただけるだろうということで百年後芸術祭に加わりました。木更津市では、人と自然が調和した持続可能な「オーガニックなまちづくり」を進めています。そのような背景があることに加え、百年後芸術祭では環境を意識したものにしたいという意向もお聞きしていましたので、我々としてはその考えに賛同した側面もあります。その分、個人的には上総丘陵に位置する市町も含めて里山としての一体感を出しすなど、オーガニックの理念を盛り込みながら進められればという思いもありましたが、まずは5市で力を合わせていこうということになりました。 ---------「オーガニックなまちづくり」について、具体的な取り組みなどを教えてください。 そもそものきっかけは小林さんが木更津で始めた農業法人 耕す(現・KURKKU FIELDS)を見学したことです。私が市長に就任して間もない頃なので10年ほど前ですが、その頃の耕す農場では有機農業への取り組みを通じて自然が好きな方々が集まりネットワークを作っていました。そのような人と人とのつながりを見て、これからのまちづくりには「オーガニック」がキーワードになるのではないかと感じました。ここで言うオーガニックとは有機農業だけではなく、まちづくりを進める中で必要な様々な取り組みが有機的につながり、持続可能な地域を目指すことを意味する言葉として用いています。 当時の木更津はアクアラインの通行料金引き下げの効果によって活性化し始め、市内を訪れる方や移住者も増え始めていました。その影響で都市化への期待が高まっていたのですが、木更津が本来持つ価値を最大化して地域の魅力を高めていくには自然の豊かさを活かしていくべきだろうと考え、だからこそオーガニックというキーワードでまちづくりをしていこうと市の中で議論を進めていきました。そして2016年には具体的な理念をまとめた「オーガニックなまちづくり条例」を施行しています。現在のところ、例えば自然保護活動や農業振興、産業支援の取り組みなどを行い、食育計画の一環として、木更津市内のすべての公立小中学校の給食には市内で生産された有機栽培米を使うことなども精力的に進めています。また、干潟の見学やKURKKU FIELDSと連携した農業体験など環境教育も実施しています。これは海も山もある木更津市ならではのものだと言えます。 ---------渡辺市長は生まれも育ちも木更津市ですが、この地域の魅力はどんなところにあるとお考えでしょうか。 やはり自然は重要な魅力ですから、多くの人が自然に触れられるように市内の公園を再整備し、自然に触れ合う機会を増やしながら木更津らしい豊かさを感じてもらおうと考えています。例えば木更津駅から徒歩15分ほどの場所にある鳥居崎海浜公園では、海岸線に沿ったテラスの設置や地域の食材を取り扱う飲食店、海を眺めながら温泉を楽しめるホテルが入った複合施設の設立などを行いました。公園内にあるカフェは、夕陽と富士山を同時に見られる千葉県ならではの景色を眺めながらコーヒーを楽しむことができます。ぜひ多くの方にもこの素晴らしい景観を体感していただきたいですね。 2022年3月にリニューアルオープンした鳥居崎海浜公園。美しい夕陽を見ながら食事が楽しめる絶景スポット また、木更津は江戸時代から港町としての側面を持ち、江戸との海上交流が盛んでした。その関係でこの地域には歓楽街が形成され、江戸の文化や風習が入ってきて芸者文化も盛り上がりました。今でも木更津会館という芸者の育成や芸者の予約手配などを行う建物は残っていますし、実際に芸者を呼んで花柳界を体験することもできます。こうした伝統文化も木更津の魅力のひとつだと言えます。 木更津駅みなと口(西口)を出てみまち通りを進んだ先にある「木更津会館」 ---------木更津市では百年後芸術祭でどのようなイベント開催やアート作品の展示をしていく予定でしょうか。 10月21日(土)にKURKKU FIELDSで小林さんと映画監督の岩井俊二さんによる音楽映画の楽曲を披露する「円都LIVE」を開催します。また11月5日(日)には音楽や映像、ダンスやドローンなどを融合させた「en Live Art Performance」や、千葉の食材を屋台形式で味わえる「EN NICHI BA」を開催します。アート作品の展示は現在のところ検討を進めているところなので詳しいことはお話できないのですが、私たちとしては、木更津市の特徴である海と里山に関連したアート作品とともに、街中を歩いていただくきっかけになるようなものも常設できればと期待しています。 ---------100年後の木更津市がどのような地域になっていてもらいたいとお考えでしょうか。 日本では少子高齢化を筆頭に様々な課題があり、場所によっては今後消えて行ってしまう可能性のある自治体もあります。幸いにも木更津市は、この数年で若い世代の方の移住も増えているため人口が増加傾向にありますので、この先もいつまでもにぎやかで元気な街であってほしいと思っています。そのためにも、木更津らしい豊かさを維持し、東京近郊でありながら生活の中に自然が溶け込んだ暮らしができるようになっていかなければなりません。本日紹介したオーガニックなまちづくりという考え方は、そんな未来を見据えたものでもあります。 木更津市役所駅前庁舎から眺める木更津の街 ---------最後に、「百年後芸術祭」への期待をお聞かせください。 今回の開催地である他の自治体とは個別にコミュニケーションを取ることはありましたが、5市が一体となって何かを開催するということはありませんでした。千葉県には様々な可能性を秘めたコンテンツがありますから、私たちが力を合わせれば魅力的なアイデアを実現できると思っています。この百年後芸術祭をきっかけに多くの新しい取り組みにチャレンジしていきたいですね。もちろんそれなりの洗練さも必要ですから、無闇矢鱈と何にでも取り組むのではなく、それぞれがつながりながら統一感を持って進められるよう、ルールの設定が必要であることも忘れてはなりません。 また、木更津市としては、地域の中での経済循環を円滑にすることや、自然の豊かさをこれまで以上に市民生活と融合させていくことなどが課題だと考えています。これらを解決するヒントを百年後芸術祭を通じて得られることにも期待しています。 Photo:Eri Masuda Interview:Kana Yokota  text :Tomoya Kuga

千葉の豊かな食文化を百年後に繋げるためにー。未来の食を考え、体感するイベント「EN NICHI BA(エンニチバ)」に込めた想い。

木更津市

2023.10.03

千葉の豊かな食文化を百年後に繋げるためにー。未来の食を考え、体感するイベント「EN NICHI BA(エンニチバ)」に込めた想い。

「百年後芸術祭」の一環として、10月21日(土)と11月5日(日)に 木更津にあるKURKKU FIELDS にて「EN NICHI BA(エンニチバ)」を開催します。「EN NICHI BA」とは、「縁日(ENNICHI)」、「市場(ICHIBA)」、「千葉(CHIBA)」 が融合した食と学びの新たな食体験イベントです。千葉県は山の幸、海の幸に恵まれた、豊かに受け継ぎ守られてきた食文化があります。この豊かな食文化を百年後にも伝えていきたい、そんな想いを込めて開催されます。 ここでは、「EN NICHI BA」のクリエイティブに関わるライフスタイリストの大田由香梨さんに開催に至った経緯やイベントに込めた想い、具体的なイベントの内容などについてお伺いします。 ---------「EN NICHI BA」開催に至った経緯を教えてください。 最初のきっかけは、百年後芸術祭総合プロデューサーの小林武史さんから「百年後芸術祭で縁日やりたいね」というアイデアがベースとなり、今年の5月に実験的にKURKKU FIELDSで小林さんとともにイベントを開催しました。100年後芸術祭でも大切なキーワードの一つ『EN』をテーマに 新たな縁(EN)を作り、宴(EN)を楽しむ、円(EN)となり、延々(EN)と巡る時を想う。さまざまなENを意味する「ENNICHI」というイベント名を掲げました。 大きなステージのあるクリエイティブパークで、和歌山の『ヴィラ アイーダ』のシェフ小林寛司さんやKURKKU FIELDSのシェフ達と一緒に、昔懐かしい縁日の屋台飯と、内房総を中心とした千葉の食材を掛け合わせたとても贅沢な屋台飯を考案しました。 未来食のひとつである大豆でつくった唐揚げ屋や、ジビエの骨を煮込んだボーンブロスヌードルの屋台、 朝搾りたての水牛ミルクのかき氷屋さんなどたくさんの屋台が並び、小林さんたちによる心地よい音楽とともに、たくさんの方に楽しんでいただきました。 今年5月にKURKKU FIELDSで開催した「ENNICHI」の様子。 ---------「EN NICHI BA」に込めた想いとは? 「EN NICHI BA」はその後、今一度、千葉で開催される縁日のあり方を想像した時に、いくつかの言葉が、『場(BA)』を設けることで含まれていくことに気づきました。 縁日(ENNICHI)と市場(ICHIBA)、そして千葉(CHIBA)という3つの意味が込められたこの言葉は、 百年後も食文化の豊かな千葉であってほしいという願いを込めております。 今は小さな規模ですが、百年後には、千葉に住む方々が、県内各地で行われる大規模な「EN NICHI BA」で生産者の方々と直接会話をしながら食材を買うことができ、この土地や季節でしか味わうことのできない屋台飯を楽しめるような「場」となることを願っています。 ---------10月21日(土)の「EN NICHI BA」について教えてください。 「EN NICHI BA」では、約20から25店舗の屋台が並びます。 千葉で活躍されている農家さんや、レストラン、食品加工メーカーさんとともに、皆様をお迎えいたします。また、5月にもゲストシェフとして来てくださった和歌山の「villa aida(ヴィラ アイーダ)」から小林寛司シェフをお招きして、内房総の季節の旬な季節の食材を使ったスペシャルなダイニングイベントが開催予定です。 KURKKU FIELDSの施設と農園を廻り、命の循環、大地の循環、そして環境の循環を体感した後にいただく寛治さんのお食事は、また格別な食体験となることと思います。私も、このSpecial Dinningでは、クリエイティブディレクション、空間演出でお手伝いをさせていただいています。 「villa aida」小林 寛司シェフ ---------11月5日(日)の「EN NICHI BA」について教えてください。 同じく「EN NICHI BA」では、千葉の食を楽しんでいただける店舗が多く並びます。そして、この日のスペシャル企画は、 一人ひとりが暮らしの原点に立ち返り、持続可能な暮らしを実践するために学び、体験するプログラム「生きる力を養う学校」からKURKKU FIELDSのレストラン「Perus(ぺルース)」 の山名新貴シェフが指揮をとり、百人で行う食の宴「百宴」を現在準備しています。 コロナ以降、より人と人とが向かい合い、語り合い、同じことをして楽しむ。という時間の貴重さを、多くの方が気づき始めていると思います。「百宴」では、自然と一体となる調理を通じて、多くの人と人が出会い、深められる。そんな食体験を準備しています。 KURKKU FIELDS「Perus」 山名新貴シェフ ---------「EN NICHI BA」への意気込みをお聞かせください。 この数年間、千葉でのプロジェクトなどのご縁があり、今では週の半分を千葉で過ごす二拠点生活をしています。そして千葉の風土の魅力を、日々とても強く感じています。 東京からの距離、そして、海に囲まれた半島であり、広大な大地、険しい山などがなく、とても穏やかで優しい空気が流れている千葉。この美しく優しい千葉の風土が育てた食材がハブとなり、「あらゆる循環の魅力」を、暮らしの中のアートを通して、より多くの人へ伝えていくことができればと思っています。 ■「villa aida(ヴィラ アイーダ)」小林 寛司シェフからのコメント 「メインストリームが取りこぼしている価値を、外から投げかけたいと思います」。 ■KURKKU FIELDS「Perus(ぺルース)」 山名新貴シェフからのコメント 「100年後、私たちがいない世界に何を想うか、どんな食文化を残していけるのか、残したいのか。人それぞれ想いはあると思います。私の役割としては、千葉県の豊かな環境とそこにある食材の魅力を発信しクリエイトしていくこと。食(料理)もある種の芸術活動です。今回、「EN NICHI BA」では地域の皆さんと一緒に食の豊かさをお届けします。そしてスペシャルプログラムである「百宴(ひゃくえん)」では、”分かち合う”をテーマに、人と人、人と自然が共生し、人間が生きていく上で欠かせない”循環”を五感で感じ、原始的な調理方法で皆さんと一緒に100年後を考えていけたらと思っています」。 ■百年後芸術祭 EN NICHI BA スペシャル企画(終了しました) Kanji Kobayashi Presents Special Dinning for 円都LIVE